「問題空き家」が増えている背景…空き家率の恐ろしさ
問題空き家となる予備軍が増加している背景には、①人口減少、②核家族化が進み、親世代の空き家を子どもが引き継がない、③売却・賃貸化が望ましいが、質や立地面で問題のある物件は市場性が乏しい、④売却・賃貸化できない場合、撤去されるべきだが、更地にすると土地に対する固定資産税が最大6分の1に軽減されている特例(住宅用地特例)が解除されるため、そのまま放置しておいたほうが有利、などがある。
・改善は見られたが潜在的な問題は大きい
東京について見ると、2018年の空き家率は10.6%と5年前の調査から、微減となった。
都市部では賃貸物件の供給がもともと多く、最近は相続対策で物件供給がまた増えたが、新築は満室になる一方で、古い物件の空室が増えていることを示している。借り手を募集しているうちは一定の管理を行っているため問題はないが、老朽化して募集を止めると、そうした賃貸物件は「その他」の空き家に分類されることになる。
管理が放棄されると、一戸建てと同様、近隣に悪影響を及ぼす可能性が高まる。大都市では賃貸用の空き家が将来的に問題をもたらす可能性が潜在的に高いことを示している。三大都市圏とそれ以外(地方圏)の空き家の構成比を見ると、賃貸用の割合が地方圏では4.5%であるが、三大都市圏では8.7%に達する。
一方、都区部と市町村部で比較してみると、空き家率、「その他」の空き家率とも都区部のほうが高くなっている。2013年の都区部の空き家率は1.2%に対し、市町村部では10.9%、「その他」の空き家率は都区部2.2%に対し、市町村部は1.9%である。
これは都区部において、山手線外周部を中心に木造住宅密集地域が点在していることが影響している。ただし、都区部の空き家率は低下したが、市町村部の空き家率は逆に上昇しており、近年は立地面で条件の悪い郊外の空き家が増えていることを示している。
東京にみられるように大都市圏における空き家問題で特徴的な点は、古くからの住宅地で木造住宅が密集している地域などで除却・更新が進んでいないという点、また、空き家に占める賃貸住宅の割合が高く、老朽化して管理放棄された場合の潜在的な問題が大きいことなどが挙げられる。
さらに、大都市においては、分譲マンションが多く供給されており、それが老朽化し空室が多くなり、管理放棄された場合の潜在的な問題が大きいという点も挙げられる。
米山 秀隆
大阪経済法科大学経済学部教授
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