「確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

生前贈与による相続税対策はできるだけ早くから

この時点でAさんの非課税枠は消滅するので、あとは父親から受けた贈与については、すべて20%の税率で贈与税の確定申告が必要になります。相続時精算課税をいったん選ぶと、暦年課税の110万円の非課税は使えないので、極端な話、父親から1万円をもらっただけでも贈与税がかかってきます。


 
もうひとつ、相続時精算課税制度には注意しなくてはならないデメリットがあります。なんと、いったん非課税とされた贈与も、将来的に相続税の対象になってしまうのです。

 

たとえば、相続時精算課税制度を使って、父親からの生前贈与2000万円を非課税にしたとしても、その父親が亡くなって8000万円の財産を残していたのなら、この8000万円に2000万円を足した1億円をベースに相続税が計算されます。

 

こうした理由から、暦年課税と相続時精算課税制度で迷うのであれば、私はシンプルな暦年課税を使って、少しずつ生前贈与をすることをすすめたいと思います。

 

ちなみに、暦年課税を選んだ場合であっても、贈与者が亡くなる3年前以内に贈与された財産については、相続税の対象に含まれることになっています。

 

ですから、「お父さんの余命が短いから、相続税対策のために急いで生前贈与しないと」と思っても、それは無理です。生前贈与による相続税対策は、できるだけ早くから考えておきましょう。

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年4月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

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確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

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小林 義崇

河出書房新社

クイズ形式で出題。ベスト・チョイスはどっちか? 青色申告or白色申告。開業届を出すor出さない。家族を雇うorパートを雇う。iDeCo or小規模企業共済。郵送で申告or e‐Tax。国税専門官として数多くの申告相談に携わった著者…

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