不動産の賃貸契約・売買契約には、しばしばトラブルがつきまといます。日本人の場合、裁判が比較的身近な欧米人と比べ、訴訟を敬遠する人が多い傾向ですが、「おかしい」と思ったら泣き寝入りは禁物です。本記事では、不動産に関する契約の場で起こりがちな裁判事例を中心に解説します。

 

●大雨が降るたびに浸水被害を受ける住宅 

 

訴訟内容

未完成の新築マンション売買で、買主が1階住戸を購入したが、建物完成後に住み始めると台風や大雨のたびに床上浸水し、それが何年も続いた。買主は売主の不動産業者に対して売買契約の解除と慰謝料を請求した。

 

結果:判決/売買契約解除

不動産業者は新築工事中にも浸水被害があったことを知っており、その対策として防潮板を追加設置したが被害は繰り返されてしまった。判決では不動産会社の瑕疵担保責任に基づき、買主による売買契約解除が認められた。

 

●競売開始物件と知らず、賃貸住宅として契約・入居 

 

訴訟内容

不動産会社が入居者に事実を説明しないまま、すでに競売開始決定している賃貸住宅の賃貸借契約を取り付けた。その物件は数カ月後に落札され、入居者は新しい家主と新規に賃貸借契約を結ぶか、退去するかを迫られることとなった。入居者は不動産会社への処分を求めた。

 

結果:処分/不動産会社を業務停止処分

競売開始決定について知っていたにもかかわらず重要事項説明を十分に行わなかったとして、不動産会社を業務停止処分とした。

 

●投資用ビルを内見できずに購入、建物の損傷に愕然 

 

訴訟内容

投資用1棟ビルの売買で、不動産会社から「入居中なので現況渡し」と言われ、内見もできないまま契約した。引渡し後、入居者の許可を得て室内を確認したところ、雨漏りによる建物の傷みが激しく、また不動産会社からは「売主は賃借人から敷金は預かっていない」と説明されていたにもかかわらず、実際には入居者から敷金が差し入れられていた事実も判明した。

 

結果:処分/不動産会社を業務停止処分

現状有姿での引渡しとはいえ、雨漏りなど目視で確認できる瑕疵の説明をしなかったことや、預かり敷金の調査・説明が不十分であるとして、不動産業者を業務停止処分とした。

 

●庭先が町内会のゴミ置場だとは知らされず… 

 

訴訟内容

中古マンションの売買で、買主が専用庭付き1階住戸を購入した。内見の際に、専用庭の柵の向こうに資材置場が見えたが、「道路工事か何かの仮置場だろう」とそれほど気にせず契約を交わした。引渡しを終えて資材置場の状況を確認すると、そこが町内会のゴミ置場だったことがわかった。買主は不動産会社に対し、町内会にお願いしてゴミ置場を移設してもらうか、それができない場合は専用庭の柵外に植栽を施すこと、併せて購入価格の減額を求めた。

 

結果:和解

不動産会社が事前説明が足りなかったことについて謝罪し、専用庭の塀外に植栽を施し、解決金を支払うことで和解が成立した。

近隣との関係悪化を理由に、遠慮しがちだが…

 

多くの人は、近隣との関係悪化を考慮し、訴訟という思い切った行為をためらいがちですが、矛盾を感じたことに声を上げなければ課題の解決はできず、精神的ストレスはもちろん、自身の大切な資産を毀損することになりかねません。

 

店のスタッフに文句をつけ「責任者を呼べ!」などと声を上げる人には、えてして「わがままなクレーマーだ」と冷ややかな視線が注がれがちです。しかし、実際に重大な過失があったのなら、クレームを申し出るのは当然ではないでしょうか。

 

不動産取引には大きな金額が動きます。契約前後はもちろん、引渡し後に物件の不具合や近隣住民とのトラブルに遭遇した場合にも、泣き寝入りするのではなく、しっかりと対処し、自分の権利や財産を守る姿勢が大切なのです。

 

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※本記事は、「ライフプランnavi」に掲載されたコラムを転載・再編集したものです。

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