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米大統領施政方針演説:追加経済対策として米国家族計画を表明
バイデン米大統領は2021年4月28日(日本時間29日)に上下両院合同会議で就任後初の施政方針演説(一般教書演説に相当)に臨みました。
施政方針演説でバイデン大統領の景気対策としては第3弾となる追加経済対策(米国家族計画)について説明しました。また、第2弾(米国雇用計画)同様に、内容の詳細についてファクトシートが公表されました。
どこに注目すべきか:米国家族計画、教育、増税、長期投資
バイデン米大統領が提案した米国救済計画は3月に法案として成立しました。3月末にはインフラ投資を主体とする米国雇用計画を提案(第2弾)、そして今回、第3弾となる米国家族計画を提案しました。第2弾と第3弾は提案の段階で法案としての審議はこれからです。今後の動向を占う意味で第3弾の意味を要約すれば所得再配分を通じた人への投資と見られそうです。
米ホワイトハウスが公表したファクトシートによると、米国家族計画の規模は投資と減税(支出案、図表1参照)の合計で1.8兆ドル、内訳は教育や養育などへの投資で1兆ドル、減税が0.8兆ドル規模とそれぞれなっています。
財源の規模はファクトシートでは総枠として1.5兆ドルが示されています。内訳は課税格差の縮小が7000億ドルととファクトシートに記されています。したがって、残りの8000億ドルが高額所得者への増税と見られます。ファクトシートは特に収入については、図表1の「主な内容」に示したような項目別の金額が示されていないため、責任ある連邦予算委員会(CRFB)の推定などを参考値として示しています。
なお、米国家族計画だけを取り出せば、財源が足りないことになりますが、第2弾の米国雇用計画における法人税増税により財政赤字が縮小するとの期待が併記されています。個別提案での財政均衡でなく合算してみてゆく必要があるとの示唆なのかもしれません。
米国家族計画の内容を見ると、支出案では教育や人への投資が主体で、第2弾のインフラ投資を支える労働力、人への投資の必要性を最近の研究成果をベースに訴えています。例えば、就学前の幼児(3~4歳)教育の拡充は、その後の習熟度合いを高めるとの研究成果を提案のベースとしています。教育の質の底上げによる成長戦略と思われます。
米国家族計画は中低所得者向けの教育や職業訓練を通じて経済成長を支援する内容で、第2弾のインフラ投資など長期的な経済成長に必要とされる労働力の確保を支援することへの貢献が期待されます。
米国家族計画の別の側面は所得再分配です。支出案と収入案、もしくは税金政策について、減税(支出)と増税(収入)をセットで見ると、収入案や減税策は児童税額控除など概ね中低所得者への支援となっています。一方で収入案を見ると、内国歳入庁へ予算をつけて、高所得者の課税逃れを抑えること、もしくは高所得者向けの課税税率を引き上げることが主軸となっています。高所得者から中低所得者への所得再分配の流れが見られます。もっとも、第1弾の1.9兆ドルの追加経済対策は短期的な必要性から法案として比較的速やかに成立しました。一方、第2弾と第3弾は長期投資の性格で財源に増税を伴います。既にバイデン大統領が増税案に妥協の可能性を示唆しています。今後の道のりは険しそうです。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『バイデン大統領の最新の政策は所得再配分』を参照)。
(2021年5月7日)
梅澤 利文
ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト
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