日本で亡くなる人は、年間130万人。亡くなる人の数だけ相続がありますが、お金が絡む話にはトラブルはつきものです。今回は40歳差の「年の差婚」、その先に潜む相続トラブルのリスクについて、山田典正税理士が解説します。

解説:「相続発生で心変わり」はよくあること

いつトラブルが起きるのかとハラハラしていましたが、今回はまさかのハッピーエンド(今のところは)でした。まずは結婚ができて良かったですね。おめでとうございます、と伝えたいです。

 

ただ、これが本当にハッピーエンドでBさんの相続があった場合にも円満にいくかどうかというと、気になる点があります。おそらくお気づきの人も多いのではないかと思いますが、Bさんの遺言に対して、Aさんは遺留分侵害額の請求ができます。Aさんが本当に純粋な気持ちで財産については一切権利をいらないと思っていたとしても、今後の生活の中でどう気持ちが変わるかはわかりません。

 

また、実際にBさんに相続があったときにどう思うかはその時になってみなければわからないでしょう。今はお金をいらないと思っていても、後になってAさんが遺留分を持っていると知ったときにどう考えるか、Bさんも高齢であり今後介護も必要になるかもしれません。Aさんは長い間の介護を経て相続があったとしても財産の権利がいらないと思えるかどうか、非常に性格が悪いことを言うようですが、財産はいらないと言っていた人がいざとなれば権利を主張する、ということは現実にもよくあることです。

 

 

また、Aさんの子どもたち、Bさんの子どもたちは結婚前の子どもであり、お互いに再婚相手の相続権は持ちません。Bさんの子どもたちは大人であり年齢もAさんよりも上であるため、このケースでBさんの子どもたちがAさんの養子になる可能性は低いように思います。

 

ただ、Aさんの子どもたちはまだ若いですし、Bさんが養子縁組をする可能性も高いように思います。そうしますと、Aさんの子どもたちも遺留分を主張することができることになります。つまり、Aさんの子どもたちが大きくなってきたときにBさんの相続があったとして、Aさんの子どもたちもその遺言に納得するかどうかについても気を付けなければならず、その点でもトラブルに発展する危険性をはらんでいると言えます。

 

いずれにしてもトラブルを100%回避することは不可能ですし、Bさんの子どもたちが確実にすべての財産を貰えるようにすることは不可能です。しかしBさんの遺志を尊重するということであれば、民事信託の設定も一つの手です。

 

遺言は相続があったときに効力が発揮され、またその後に財産をどうするかについて制限はできません。一方で民事信託の場合には、自身の相続だけでなく、次の代の相続にまで自身の意思を反映させることができますし、使い方の制限もできます。

 

たとえば、信託において、Bさんの相続では一部の財産をAさんが相続することにしたとして、次にAさんに相続があればBさんの子どもたち、もしくは孫たちに相続させることを指定するも可能になるわけです。

 

さらに、民事信託は相続後だけでなく生前のお金の使い方まで管理することができるので、成年後見人の対策にもなります。

 

民事信託制度も良いことばかりではありませんので、よくよく検討して決めなければいけませんが、AさんBさんとその子どもたちは、遺言だけで安心するのではなく、タイミングで話し合っていかなければならないと思います。ただ、気持ちとしてはまずはAさんとBさんの結婚を祝福したいですね。

 

 

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※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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