ヘッジファンドに関心はあるけれども、情報が少なく、二の足を踏んでいる人も多いでしょう。そこでヘッジファンドマネージャーの話から、ヘッジファンドの実態を明らかにしていきます。前回に続いて話を伺うのは、国内独立系ヘッジファンドのオリオール・アセット・マネジメント株式会社に所属する小野塚二也氏。常にプラスのリターンが求められるヘッジファンドは、コロナ禍で先行き不透明感が漂う株式市場でどのように対応しているのかを、今後の見通しを含めて解説します。

1日のスケジュール…「マーケット」から目を離さない

オリオール・アセット・マネジメント(株)の小野塚ヘッジファンドマネージャー
オリオール・アセット・マネジメント(株)の小野塚ヘッジファンドマネージャー

 

――ヘッジファンドマネージャーは普段あまり表に出てくることはなく、どういうことをしているのか知らない人もいると思うのですが、1日の大まかなスケジュールを教えていただけますか?

 

朝は7時半ぐらいからアナリストやヘッジファンドマネージャーとマーケットについて話し合います。主に、前日にリサーチした銘柄の分析、スモールミーティング等の報告、リスクウェイトのチェックや銘柄ごとの決算発表、海外のマーケット動向など様々な情報を共有し合います。

 

最も重要なのは、当社のアナリストがディープリサーチをした「銘柄の報告」で、ここに一番時間を割いています。

 

※投資候補先の企業訪問に留まらず、関連会社、同業他社などの周辺企業まで含めた、経営陣との深い対話を通じて企業分析を行うこと

 

そして、相場が動き始める8時半ごろから先物・オプションの取引時間が終わる15時15分までは、マーケットにずっと張り付いています。16時30分からは先物・オプション市場のナイト取引が始まりますので、気を抜く時間はありませんが、ナイト取引が始まるまでに、その日のパフォーマンスをチェックして、翌日のポートフォリオをどのように構築していくかをまた話し合います。

 

コロナ禍になる前は、15時以降に様々な打ち合わせを入れていました。しかし、Zoomなどを使ったミーティングが主流となってきましたので、最近はマーケットが動いている間にオンライン会議をやることもあります。ただし、打ち合わせ中も、相場から目を離すことはありません。

 

マーケットは24時間、世界中で繋がっており、なかなか終わりはありませんので、特に勤務時間は決まっていません……。むしろコロナ禍になって移動時間が減ったので、個別企業のリサーチやマーケットを分析する時間が増え、1日が濃密になった気もします。夕食後に思い出したかのようにパソコン開いて銘柄をチェックしたり、先物のナイトセッションをトレードしたりと、気が抜けない1日を過ごしています。

コロナ禍でも堅調な株式市場…今後のマーケット見通し

――昨年(2020年)のコロナショックでは、世界中の株価が大幅に下落しました。しかし、政府による大規模な財政支出や中央銀行が市場に大量に資金供給を実施するなど、市場対策を実施したことにより、株式市場が堅調を保っているという見方が多いと思うのですが、御社のファンドの今後の見通しを教えていただけますか?

 

去年のコロナショックでは日経平均株価は一時16,552円まで下落しましたが、一方でバブル後の最高値を更新したことも記憶に新しいでしょう。しかし、中央銀行が金融緩和を実施し、資金が市場に大量供給されたことが市場を下支えている一方で「通貨の価値」が下落する結果となりました。このことに関しては、2つの側面があると考えています。

 

1つ目は、金融緩和はPER(株価収益率)の上昇を容認するという効果が得られるので、業績が期待されるグロース銘柄(成長株)にプラスに働くということです。

 

2つ目は、市場が落ち着き、金利が上昇し始めると、グロース銘柄からバリュー銘柄にシフトするような動きが見られます。それがある程度ピークを迎えると、グロース株でもバリュー株でもないような銘柄の株価までもが色々な理由を付けて上がってしまうと考えられます。

 

ただし、このような局面になったときに利益を狙いにいくのは非常に難しく、私たちがショート(空売り)をしている銘柄も上がってしまいますので、私たちにとっては一時的に厳しい局面が訪れるかもしれません。

 

すでに大きな局面は終わったと思いますが、コロナ相場の難しいところは、このような局面が大なり小なり繰り返されていくとことにあります。コロナ相場はまだ終わっていないのです。

 

ただし、コロナ相場が最終局面を迎えて、私たちが考えている本当の意味でのアフターコロナを迎えるような局面に戻れば、相場全体を表す指標であるTOPIXも落ち着き、企業の業績や将来の成長力が株価に反映される相場に戻ると予想しております。そのときは、私たちが得意にしているIT・サービスセクターが最も有望なセクターになると考えています。

 

 

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インタビュアー/冨中 則文(幻冬舎アセットマネジメント)

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