ヘッジファンドに関心はあるけれども、情報が少なく、二の足を踏んでいる人も多いでしょう。そこでヘッジファンドマネージャーの話から、ヘッジファンドの実態を明らかにしていきます。今回話を伺うのは、国内ヘッジファンドの先駆けである株式会社GCIアセット・マネジメントの山内英貴氏。どのような想いで「栃木の6畳1間」で創業して、グローバルな運用ができるようになったのかを紹介します。

社名の由来…ネットを通じてグローバルな投資をする

GCIアセット・マネジメントの山内ヘッジファンドマネージャー
株式会社GCIアセット・マネジメントの山内英貴代表取締役CEO

 

――まず始めに、社名の由来と、日本で独立系ヘッジファンドを立ち上げた経緯について教えていただけますか?

 

GCIアセット・マネジメントは「グローバル・サイバー・インベストメント」の頭文字をとったもので、「インターネットを通じてグローバルな投資をする」という意味を込めました。設立した2000年は、スマホなどなく、インターネットも今ほど普及していませんでしたが、当社はその先駆けとして、インターネットを通じて世界中のマーケットで投資活動を始めました。

 

私は元々、日本の銀行でマーケット関連の仕事をしており、90年代後半はシンガポールにも滞在しておりました。そのときに、エマージング市場(=新興国市場)に関わる仕事を担当したことがきっかけで、様々な欧米の投資家と話す機会が増えました。

 

そのような方々と話をしていると、株式や債券に分散する「リスク分散型の安定運用」よりも、今後はショート(=売り)も組み合わせた絶対収益※1を追求するような「ヘッジファンド型の運用ニーズ」がますます強まるだろうなという感覚になりました。

 

※1:上げ相場でも下げ相場でも収益の獲得を目指すこと。

 

そんなとき、ある事件が起きました。「1997年のアジア通貨危機」です。

 

私は当時、シンガポールにキャピタル・マーケットのチームを立ち上げたところでした。私は早くからアジア通貨暴落のリスクに警鐘を鳴らしてはいたのですが、銀行の日本の取引先の多くが為替差損から大きな痛手を負いました※2

 

※2:『アジア発金融ドミノ』(山内英貴、1999年、東洋経済新報社)

 

その一方、グローバルに活躍するヘッジファンドや投資銀行が大儲けしているのを見て、彼らがジャパンマネーを蝕(むしば)んでいるような悔しい思いをしました。

 

そこで、日本にも「絶対収益」を追求するヘッジファンドが必要だと感じたのです。

 

あああ
下げ相場でも利益を追求する「絶対収益」型の運用が求められると確信。

「栃木の6畳1間」でPC2台で創業し、地道に活動を開始

――海外のヘッジファンドが暴落時でも稼いでいるのを見て、感化されたということですね。それでは、立ち上げてからのことを教えてください。

 

感化されたというよりも、悔しい思いをしたというのが実感です。

 

その後、私はシンガポールから日本に帰国し、2000年に銀行を退職しました。そして、当時3歳の幼い娘を連れて栃木県の田舎町にある私の実家に帰りました。そこで、6畳1間にパソコン2台を置いて、GCIを創業しました。

 

日本版ビックバン(=大規模な金融制度改革)が起きて、インターネット証券が登場し、ちょうど投資環境が大きく変わろうとしていた時期でした。

 

しかし、すぐにシードマネー(=新しいビジネスを始める際に必要な資本)を出してくれる投資家が現れるわけもなく、小さな部屋に籠って1人でインターネットで情報発信をしたり、本を書いたり、銀行員時代にお付き合いがあった機関投資家や大手商社の方と会ったりしていました。独立するお金はありませんでしたが、時間だけはありました(笑)

 

 

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インタビュアー/冨中 則文(幻冬舎アセットマネジメント)

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