高齢化、人口減少…昨今、マンションを取り囲む状況は極めて厳しいものになっています。大阪経済法科大学経済学部教授の米山秀隆氏の書籍『限界マンション 次に来る空き家問題』(日本経済新聞出版社)より一部を抜粋・編集し、マンションの建て替えの問題点を解説していきます。
「形を変えた土地神話」マンションにしがみつく人々
区分所有権の解消のほうが合理的な面があるにもかかわらず、建て替えを優先的に考える法体系となっている。いったん所有した区分所有権は手放さず、そこに建て替えて住み続けたいという発想は、戦後の持続的な地価上昇と持ち家取得の促進に偏った住宅政策の下で形成された、所有権に対する強いこだわりと深く関わっていると考えられる。
今や土地神話は過去のものであるが、建て替えてまで同じ場所に住み続けたいとする人々の実際の意識や行動パターンには、いまだ土地神話時代から抜け出せていないという面もあるかもしれない。
他方、前述のように、寿命が短く、建て替えを当然のように考える日本の特殊なマンション事情には、マンションを分譲の形態で販売することと、老朽化した後に建て替えることに利益を見出してきた供給者側の論理がいまだまかり通っていることも色濃く反映されている。
こうした人々の意識や、供給者側の論理を前提にして、建て替えを重視する日本のマンション法制が次第に形成されてきたというのが、本当のところであろう。
米山 秀隆
大阪経済法科大学経済学部教授
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
大阪経済法科大学経済学部教授
経歴
2020年9月~ 大阪経済法科大学経済学部教授
2020年8月~ 総務省統計局「2023年住宅・土地統計調査に関する研究会」メンバー
2019年10月~2020年8月 国立研究開発法人勤務
2019年4月~2019年9月 株式会社シンクダイン
2016年6月~2017年10月 総務省統計局「2018年住宅・土地統計調査に関する研究会」メンバー
2009年4月~2017年3月 高崎商科大学非常勤講師
2007年7月~2010年3月 慶応義塾大学グローバルセキュリティ研究所客員研究員
2004年2月~2019年9月 「ESPフォーキャスト調査」フォーキャスター
1996年4月~2019年3月 株式会社富士通総研
1989年4月~1996年4月 株式会社富士総合研究所
1989年3月 筑波大学大学院経営・政策科学研究科修了(経済学修士)
1986年3月 筑波大学第三学群社会工学類卒業
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載「マンション限界時代」スラム化していくマンションたち