「頸椎」と「腰椎」の椎間板ヘルニアは手術法が異なる
保存的治療などでは改善が見られず、痛みやしびれに耐えられなくなったときは、手術を行いますが、この場合、頸椎椎間板ヘルニアと腰椎椎間板ヘルニアでは手術の方法が異なります。
〈頸椎椎間板ヘルニアの場合〉
●切開手術
神経を圧迫している椎間板部分を取り除き、頸椎を正しい位置に固定する手術です。これには、前から切開する「前方除圧固定術」と、後ろから切開する「後方除圧固定術」の2種類があります。
前方除圧固定術は、頸椎のある喉側を開いて椎間板と飛び出してしまったヘルニアをすべて切除し、椎骨同士を人工骨または自分の骨を移植して固定する方法です。気道や食道などの器官がある首の前方を開くので、手術によって声がかすれてしまったり、物をうまく飲み込めなくなってしまったりすることがあります。
後方除圧固定術は、首の後ろの中心に縦にメスを入れて10センチメートルほど開き、そこから椎骨の傍にある椎弓を切り開き、脊髄が入っている脊柱管を広げる方法です。この場合、ヘルニアは切除せず、首の後ろにある頭を支えている筋肉を切ってしまうので、術後は肩が凝ることが多くなります。
どちらの切開手術を受けるのかは、ヘルニアの箇所や症状によって異なります。一般には首の前側からアプローチする前方除圧固定術を行い、脊柱管狭窄症を併発する場合や複数の箇所にヘルニアが生じている場合は、後ろ側からアプローチする後方除圧固定術を行うようになります。
これによって長年悩まされていた手のしびれや痛みといった症状の悪化と進行を防ぐことができるうえ、保険診療が適用されるので費用が抑えられるのがメリットです。
しかし、ヘルニア部分を取り除いてできた隙間に人工骨または自分の骨を移植し、金属製のネジで固定する必要があるので、身体への負担が大きい手術となります。
また、メスを入れる手術なので、手術中に神経や動脈を傷つける危険や、術後には移植した骨が定着せず脱落してしまう恐れもあります。また、後方除圧固定術ではヘルニアは残したままになりますので、症状が改善しない場合や何年かあとにまた症状が出る場合があります。
〈腰椎椎間板ヘルニアの場合〉
●切開手術
腰椎椎間板ヘルニアの手術には、「直視下」「顕微鏡下」「内視鏡下」といった方法があります。これらは、患部をどのような方法で見ながら手術を行うかという違いだけで、飛び出したヘルニアの部分を切り取る手術であることは同じです。
・直視下や顕微鏡下の場合
背部を十数センチメートル切開し、筋肉や靭帯、脊髄や神経根などを避けて、脱出したヘルニア部分を肉眼あるいは顕微鏡で観察しながら切除します。最も一般的な手術は「ラブ法」といわれる方法ですが、メスなどの手術器具が脊髄や神経根などに触れ、後遺症が出てしまうことがあります。
また、全身麻酔で行うため、心臓病や糖尿病などの疾患がある人や、人工透析を受けている人にはリスクを伴います。非常に大がかりな手術のため、手術後1週間は安静が必要となるうえ、その後1カ月ほどリハビリや入院が必要となります。高齢の患者さんには大きな負担となるでしょう。
・内視鏡下の場合
背部を3〜4センチメートルほど切開し、そこから顕微鏡や内視鏡を挿入して手術を行う方法です。切開する部分が小さいので出血が少ないのもメリットです。しかし、内視鏡下手術は熟練した技能と経験が必要となり、どの医者でも行えるわけではありません。
また、どのような状態のヘルニアにも行えるというわけではないため、手術前に内視鏡下手術を予定していても、実際には直視下手術に変更することがあります。
これらの手術は、術後さらに椎間板が押されて飛び出してしまい、ヘルニアが再発してしまうことも少なくありません。飛び出しているヘルニアを大きく削ると、今度は椎間板がクッションとしての役割を果たせなくなり、痛みが起こる可能性もあるのです。
そのほか、腰椎には後方除圧固定術や、最近では側方除圧固定術というものもあります。いずれも長所短所は頸椎の前方除圧固定術とほぼ同じです。
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