全国で10万200人が「介護」を理由に退職
親に介護が必要になったら……。
そんな想像をしたことがあるでしょうか。親が高齢であれば、介護の現実味が増しますが、まだまだ元気であれば、なかなか想像しにくいものかもしれません。
厚生労働省『2019年雇用動向調査』によると、退職者785万8100人のうち、「介護・看護」が理由だったのは10万200人。男性が2万400人、女性が7万9800人と、圧倒的に女性のほうが「介護・看護」を理由に退職しています。介護現場における、性差格差が浮き彫りになっています。
年代別に見ていきましょう。「介護・看護」を理由にした退職は40代後半で1万人を超え、年齢が上がるにつれて増えていきます。全退職者のなかで最も「介護・看護」を理由にした退職者が多くなるのは「50~54歳」。総退職者50万9800人のうち、1万8400人が「介護・看護」を理由にしていて、全体の3.68%を占めます。
20~24歳 6400人
25~30歳 7000人
30~34歳 8300人
35~39歳 2200人
40~44歳 5400人
45~49歳 1万1100人
50~54歳 1万4000人
55~59歳 1万8400人
60~64歳 2万100人
とはいえ、全退職者の1.28%でしかない「介護・看護」を理由とした退職。最も多い年代であっても3%強でしかないので、やはりどの年代であっても、「親の介護」「パートナーの介護」を具体的にイメージするのは難しいことかもしれません。
そこで厚生労働省『平成29年度在宅介護実態調査』の結果を見てみましょう。同調査では「介護の限界点」について知ることができます。
「就業継続が困難と考える、介護者が不安に感じる介護」について尋ねたところ、「フルタイム勤務を続けるのはかなり難しい」という割合が高かったのが、「認知症状への対応」が48.1%、「夜間の排泄」が36.7%、「日中の排泄」が29.7%と続きます。
認知症状への対応:48.1%
夜間の排泄:36.7%
日中の排泄:29.7%
外出の付き添い、送迎等:27.9%
入浴・洗身:25.8%
食事の準備(調理等):24.4%
屋内の移乗・移動 17.9%
その他の家事(掃除、洗濯、買い物等) 17.7%
金銭管理や生活面に必要な諸手続き 15.0%
服薬 14.6%
食事の介護(食べる時) 13.6%
衣服の着脱 7.9%
医療面での対応(経管栄養、ストーマ等) 7.4%
その他 6.9%
身だしなみ(洗顔・歯磨き等) 6.1%
主な介護者に確認しないと、わからない 2.0%
不安に感じていることは、特にない 1.0%
このように見ていくと、介護をするうえで、認知症の症状が現れたときや、排泄の介助が必要になったときが、介護を理由に退職を決意するポイントだといえそうです。