人は共通点を見出した相手にすぐ親近感を抱くものです。そこを利用すれば、自分の「お願い」を相手に気分よく聞いてもらうことが可能です。メンタリストDaiGo氏が、自身の影響力を高め、人間関係で優位に立つ方法を解説します。※本記事は、『超影響力~歴史を変えたインフルエンサーに学ぶ人の動かし方』(祥伝社)より抜粋・再編集したものです。

政治にも利用される「類似と共通点の強調」テクニック

●「好きな形容詞が同じ」だけで頼み事を聞く確率が2倍に

 

カリフォリニア州にあるサンタクララ大学の実験です。

 

研究チームは実験の参加者に「50種類の形容詞の中から好きなものを20個選んでください」と依頼し、全体を3つのグループに分けました。

 

①類似グループ:好きな形容詞として選んだ20個中、17個が一致する人を集めた集団

②ニュートラルグループ:20個選んだ形容詞のうち10個が一致する人を集めた集団

③非類似グループ:20個中、3個の形容詞しか一致しなかった人を集めた集団

 

その後、各グループ内で「自分の書いたエッセイを読んで感想を聞かせてもらいたい」「グループのために〇〇まで行って〇〇を運んできてもらいたい」など、簡単な頼み事をし合うという実験を行ないました。

 

すると、頼み事の成功率に大きな差が生じたのです。

 

①の類似グループでは、77%の人が相手の頼み事を聞き、行動を起こしました。これが②のニュートラルグループでは60%、③の非類似グループでは43%まで下がったのです。

 

「好きな形容詞」が似ているというのは、ほんの些細な類似点であり、共通点にすぎません。それでも「自分たちはあんまり似てないな」と思っているグループと、「私たちは何か似ているところがあるな」と感じているグループでは、相手の頼み事を聞く確率が2倍近く上がるというのは、驚きの数字です。

 

人は自分と似た部分のある人には好意的になり、影響力を受けやすく、手を差し伸べたい、助けたいと思い、行動を起こすのです。

 

 

たとえば、アメリカの大統領選挙では候補者たちがわざわざ記者団を引き連れ、マクドナルドでハンバーガーを食べたり、支持者の赤ん坊を抱っこしたり、野球帽を被って地元チームの応援に行ったりするシーンを演出します。

 

これも類似と共通点の強調です。

 

裏読みをするタイプの有権者には通じませんが、メディアを通して映像を目にした人たちのいくらかが「オレと同じマクドナルド好きだなんて庶民派だな」「孫世代の子どもをかわいがる気持ちは私と同じ」「野球好きなのか。親近感湧くな」と、「あの候補は身近な存在だ」と感じてくれたら御(おん)の字。

 

類似点、共通点を感じた有権者は、その候補者が政策の話をするときも積極的に耳を傾けるようになり、仮にスキャンダルが出ても好意的に解釈しようとしてくれます。

 

あなたが選挙に出ることはないかもしれませんが、周囲の人に対して影響力を発揮したいと考えているなら、類似と共通点の強調を日々のコミュニケーションに取り入れていきましょう。

 

特に「シュムージング(本題を切り出す前に自分のことをネタにした雑談を挟むテクニック)」と「ストレングス(聞き手に自信を与え、行動を起こしやすくさせるテクニック)」を行なったあとであれば、その効果は絶大。確実に相手の信用を得ることができます。

相手が思わず頼みを聞いてしまう「最強コンボ」とは?

●人は、頼み事をしてきた相手のことを好きになる

 

ちなみに、「類似と共通点の強調」は会話の冒頭で行なうように心がけてください。

 

「私たちって趣味が合いますね」「僕らは価値観のこういうところが共通しているね」「あなたとは育った環境が似ているよね」といった会話は、一般的にはある程度、仲がよくなってから交わされます。

 

もちろん、気の合う人同士がさらに親近感を抱くという意味では大切なやりとりです。

 

しかし、影響力のある人を目指すのであれば話は変わってきます。

 

こうした類似点や共通点を確認し合う会話はできるだけ早めに交わしましょう。仲がよくなってからでは遅すぎます。時間がもったいない。

 

「シュムージング」で距離感を縮め、「ストレングス」で相手のよいところを指摘したら、その過程で感じ取った自分との類似点や共通点を伝えます。

 

それだけ相手はあなたへの好意を膨ふくらませ、話に耳を傾け、頼み事も受け入れてくれやすくなるのです。

 

しかも、人間には頼み事をしてきた相手のことを好きになる心理があります。これは人が「自分が親切な行動を取るのは、相手のことが好きだからだ」と認識するから。

 

つまり、「類似と共通点の強調」で準備を整え、頼み事をして力を貸してもらうと、相手は手助けしてあげたあなたのことをますます信用するようになるのです。上手に人に助けてもらえる人は成功者になります。

 

この仕組みを日常生活の中でうまく使っていくなら、こんな組み合わせがいいでしょう。「類似と共通点の強調」で相手との距離を縮めたら、「今、〇〇について困っているので、アドバイスをいただけないですか?」と助言を求めるのです。

 

これは「アドバイス・シーキング」と呼ばれる心理テクニックで、セールスパーソンが商談時に顧客に対してアドバイスを求める会話を加えるだけで、ある商品の成約率が8%から42%に上昇したというデータもあります。

 

背景にあるのは、ここでも「自分が親切な行動(=アドバイス)をしたのは、相手のことが好きだからだ」という心の動きです。

 

「類似と共通点の強調」で相手があなたの影響を受けやすい下地を作り、「アドバイス・シーキング」でアドバイスをもらい、こちらをさらに好きにさせます。そしてそのうえで、あなたが相手にしてもらいたい「頼み事」をするのが、最強コンボ。相手は知らず知らずのうちにあなたを信用し、強い影響を受けるようになります。

 

影響力のある人が周囲の人たちに好かれ、頼られるのは、影響を与えるごとに好感度が上がっていく仕組みを知っているからです。

 

◆ポイント◆

自己開示を含む雑談で距離を縮め、相手のよい点を指摘し、互いの類似を意識させると、「信用」が築かれる。

 

 

メンタリストDaiGo

 

 

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歴史的に紐解くと、メンタリストというのは、元々は欧米において政治家のブレーンとして、演説の原稿を用意し、話し方や身振り手振りの効果的な活用法をアドバイスし、大衆の心を動かす伝え方の手助けをしてきた存在でした。 …

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