『サザエさん』のお父さん・波平さんは54歳
長寿社会ゆえの新たなリスクとは
いまは60歳定年制の企業が約8割で、高年齢者雇用安定法により、希望すれば65歳まで働けることになっています。最近は65歳定年や70歳定年という企業も出始めており、これからますます定年の年齢は延びていくでしょう。
しかし、60歳定年の歴史は意外と浅く、一般に定着したのは1998年です。この年に高年齢者雇用安定法が改正され、60歳未満の定年が禁止されます。それ以前は55歳が定年でした。
漫画『サザエさん』のお父さん・波平さんは54歳という設定です。いまどきの54歳と比べると、かなり老けているイメージではないでしょうか。『サザエさん』は昭和21年から49年まで新聞に連載されていました。昭和30(1955)年の平均寿命は、男性が63.6歳、女性が67.75歳です。波平さんも老境の域に差しかかっていたといえるかもしれません。
もちろん、その頃の定年は55歳。平均寿命の64歳で亡くなるとすれば、老後の期間(定年後)は9年間です。この時代は、払い込んだ以上の年金が支払われたので、それほど心配はありませんでした。老後生活も9年と、いまよりずっと短いのです。
いっぽう、現代の54歳はまだまだ元気。ほとんど働き盛りといってもいい年齢で、とても引退を考える時期ではありません。
ところが、平均寿命は17年も延びたのに、定年は5年しか延びていません。すなわち、老後生活だけが長くなったのです。
当然、長い老後を安心して過ごすための資金が必要になります。
65歳まで働き口が確保できるとはいえ、定年後の再雇用では、給与は多くの場合、半減してしまいます。65歳でリタイアしたとしたら、平均余命まで生きると仮定すると、男性は約20年、女性なら約25年という長い老後が待っているのです。
1か月の生活費として、60歳以上の世帯では約30万円、70歳以上の世帯でも約22万円かかります。平均の支出が月に約22万円だとしても、年間で264万円。老後生活が1年延びるごとに、264万円の負担が増えるわけです。
これが〝長生きのリスク〟だといわれているのです。高齢者の数は爆発的に増加しており、老後資金の問題はますます自助努力が求められる時代になってきます。
何歳まで生きるかがわかっていれば必要額を計算しやすいのですが、寿命は誰にもわかりません。長生きしてもしなくても、柔軟に対応できるような老後資金を準備することが、安心につながってきます。