兄と弟は牽制し合い、経営に悪影響も
嵐山産業の場合は、社長の清一と専務の順二が牽制し合い、会社の業績を向上させていくための建設的な議論ができませんでした。清一の提案に対しては、順二が反対し、順二の提案に対しては、清一が反対するという状況でした。
また、嵐山興産の最終決定権は社長の清一が持っていましたが、経営実務の大部分は専務の順二に任せていたため、内容の詳細までは把握していない案件が数多くありました。
しかし、兄弟が不仲であったため連絡を密にとることはなく、詳細が分からない案件の最終決裁が清一のもとに回ってくることもありました。清一はそのような案件は、全て却下していきました。
本来であれば、事前に清一に確認すべき事案を、順二が勝手に判断して最終決裁に回してくるためです。順二は自分が全てを任されているため当然自分で判断すべきことだと考えて話を進めていくのですが、清一にすれば経営者として認めていない順二の判断をそのまま鵜呑みにすることができないという思いからでした。
このような状況が続いていたので、新規取引先との契約破棄など、ビジネスチャンスを逃すような場面もありました。
順二が自分の力不足を認めたうえで、事前に清一に相談していればこのような状況は回避できていたかもしれません。しかし、順二は清一に対しコンプレックスを抱いていたこともあり、清一に自分を認めさせたいという思いから、素直に相談することができませんでした。
一方、清一は順二の態度を見ていると、心の奥底では、一人前になってくれるまでは自分が面倒を見ないといけないと思いつつ、自分に対して反抗しているだけで、いつまでたっても成長しない弟だと思うようになりました。
お互いの気持ちがすれ違い、悪循環に陥ってしまいました。兄弟2人が協力し合い、知恵を出し合えば業績向上のための有効な施策を実行できていたかもしれません。
兄弟の不仲回避のために「別会社」を作る効果は?
兄弟不仲の回避のため、別会社を作ることはよくあることです。兄弟2人が会社で役員を務めているのであれば、親が経営権を支配している間に、兄と弟にそれぞれ別の会社をつくり、権限を与えたうえで引き継がせておけば、後々の争いを事前に回避することができます。
嵐山産業の場合、別会社を作ったものの、うまくいかなかった要因は次のように考えられます。
嵐山産業、嵐山興産の両社とも、清一が代表権を有していたということです。順二は現場運営を任されていただけで、重要事項は清一の判断を仰ぐ必要がありました。いわば、雇われ店長のようなもので、経営者といえる状況ではなかったのです。
また、両社が密接不可分で独立できない状況も影響しています。嵐山興産は、外部からの受注もありますが、大半が嵐山産業の下請業務でした。下請であるがゆえに、発注先である嵐山産業の意向を汲み取らざるをえない状況でした。さらに、業績が悪かったことが全ての面においてマイナスに影響しました。
杉原 杏璃 氏登壇!
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
(入場無料)今すぐ申し込む>>