「経営スタイルの違い」から親子で対立することも
洛南商事は、京都でガソリンスタンドを経営している会社です。過去には大きな利益を上げていた時期もありますが、ハイブリット車の普及や若者の自動車離れの影響で昨今の業績は低迷しています。
しかし、社長である大介の経費削減等の経営努力でどうにか営業利益は確保しています。大介は30代と若いため、父親である会長の伸吾と大介の2人が代表権を有しています。
伸吾の営業スタイルは、接待を通して人間関係を構築していき、取引に繫げるというものでした。取引先である運送会社の接待を通して、その関連会社を含めた全てのグループの取引を獲得したこともありました。また、新規開拓のため銀行や同業者団体等が開催する各種会合には必ず参加して、人脈を広げていき、新たな取引先を開拓することもありました。
このように、伸吾は多額の交際費を使って売上を伸ばそうとするタイプで行動力もありますが、ワンマンで周囲の意見に耳を傾けることはありませんでした。交際費等の経費のなかには、売上の伸長のためかあるいは自身の遊興のためか、判然としない経費も少なからず含まれていました。
一方、大介は経営大学院でMBAを取得していることもあり、計数に裏打ちされた経営スタイルで、売上が減少しても利益の確保を重視して、経費削減を遂行しています。
大介の指示のもと、全社で経費削減を実行しており、大介が直接、伸吾に交際費の合理性や経費性について厳しく問い詰めることもありましたが、伸吾の交際費が減少することはありませんでした。
一昔前であれば右肩上がりの経済環境のなか、多額の交際費を支出してもそれを上回る大きな商売ができていたので、問題にはなりませんでした。しかし、大介は交際費についても費用対効果の不透明なものは、支出を抑えていきたいと考えていました。
従業員を取りまとめて現場を仕切っているのは大介であり、伸吾の業務は、古くからの得意先回りとなっています。伸吾は現状の得意先との関係を大切に思っており、経費を節減すれば得意先を維持できず、従業員の士気も下がり経営が成り立たないと考えていました。
事実、会社は経済環境が良くないこともあり、近隣店舗との低価格競争や、新規得意先の開拓に苦戦していました。伸吾はその責任は現場を取り仕切っている大介の間違った経営方針にあると考える一方で、自身は課せられた役割をしっかりと果たしているとの自負を持っていました。
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