近隣の人に作り話をする…認知症を関係者に公開した
新築の一戸建てを買い40年以上現在の自宅に住んでいる。
その10軒が隣組になった。妻は、ご近所に対していつも愛想良く振る舞い挨拶したり立ち話をしてコミュニケーションを取っていた。特に向かいの家と両隣とは親しくしていた。また、若い頃は、気の合った隣組の人たちと旅行や食事会などをして交流を深め互いの気心も分かっていた。
認知症になってしばらくしたある日。隣の奥さんから、
「ご主人。お母さんを引き取られて、一緒に暮らされるのですか?」
とか、
「ご主人は、また、M電器に勤務されるのですか?」
とかを妻から聞いたと言われ、びっくりした。
この際、隠さずに正直に伝えておこうと思い認知症であることを伝えた。
「そうでしたか。認知症とは気付きませんでした。これまでにも、ときどき、同じことを言われたり、おかしなことを言われていたので、おかしいなぁとは思っていました。これから、そのつもりで、お相手をさせて頂きます」
と言ってくれた。
このまま、ご近所に黙っているとまずいことが起こりそうに思った。また、徘徊などでお世話になることがあるかもしれない。そう思い近隣の人に認知症を知らせることにした。
当時、隣組の組長をしていたので、区費の徴収の際9軒の方々に直接認知症を伝えた。伝えたことによって同情やお見舞いの言葉、認知症に対する情報などいろいろと教えてもらった。有り難かった。公表してほんとうに良かったと思った。
妻がこれまでお世話になった関係先、知人、友人。親戚にも電話で伝えた。びっくりされたが、それぞれの方々からお見舞いや情報提供、支援、協力を得ることができた。
認知症は、隠さずに公表した方が、皆さんから関心を持ってもらい、皆さんから支えてもらえることを体得した。とても有り難く思った。
「キャ~、ワァ~」真夜中の奇声で起こされる
2016年1月の出来事だった。午前2時から3時にかけてその症状が現れた。
寝ていた妻が、突然半身を起こして「キャー」と大きな声で2階の奥座敷を指した。
「そこに泥棒がいる。男の人がこっちを向いて睨んでいる」
と叫んだ。びっくりして、「どうした!」と電気をつけた。目をつり上げ手を震わせて恐い形相をしていた。私は、すぐに奥の部屋の電気をつけた。
「ほら。誰もいないよ。お父さんがいるから、もう、大丈夫」
と言って背中をさすって安心させた。しばらくすると落ち着いてくれた。
「朝まで、まだ時間があるので、トイレにでも行こうか」
と誘い、妻を2階から1階のトイレへ誘導した。
その後も、
「ワァ~大きな犬が、こっちに来る」
とか、
「小さな子供が、そこの隅から出たり入ったりしている。こっち向いて笑っている」
とか、いつも深夜に起こされて、私は、睡眠不足に陥った。
幻視や幻覚が連続して起こるようになっていた。診察の際、先生に伝えた。再度、病院でMRIを撮ることになった。その結果「レビー小体型認知症」をも併発していることが分かった。
幻視は、深夜だけではなかった。日中も玄関先に置いてあるゴルフバッグを見て、
「男の人が座っている。恐い」
と言った。ゴルフバッグに大きな風呂敷を掛けて対応した。また、テーブルタップの白いコードを見て、
「ヘビが、動いている」
と言う。白いコードに床と同じ色の茶色のテープを巻いて床と同色にして対応した。
私は、睡眠不足に悩まされケアマネに相談した。その結果、私の体力の限界を心配しデイサービスに行かせることを勧められた。月、火、木、金と週4日間8時半~17時まで通所させることにした。
デイサービスは、送迎付きで施設に通い専門のスタッフにより食事や入浴等、日常生活の世話やゲームやレクリエーション活動を通じて機能訓練をしてもらえるところだ。そのお陰で、私は、精神的に解放されホッとした。
妻がいない日中は、家事も昼寝も妻を気にすることなくできたので、体力と疲労回復に役に立った。ケアマネに心から感謝した。
妻は、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症を併発していたので、その症状から、ケアマネと医師の申請によって、2016年3月「要介護3」の認定を受けた。
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棚橋 正夫
1936(昭和11)年、神戸生まれの京都育ち。1957年松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)に入社。音響部門の技術営業などに携わる。定年後、アマチュア無線、ゴルフなど趣味の道を楽しむ。
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