「借用書なしで貸した10万円」を取り戻すには?
【相談内容】
22歳の大学生です。男性に貸したお金が戻ってきません。
彼はバイト仲間で同じく22歳。職場で割と簡単にお金を借りる人で、私も何度か5千円とか1万円とかを貸したことがあります。
遅くとも1週間後には必ず返してくれるので、1ヵ月前に「10万貸してくれない? 給料日には必ず返すから」と頼まれたときは、あまり深く考えずに10万円貸してしまいました。
その後、彼は無断でバイトを辞め、私からの連絡を無視しています。借用書はありません。取り戻す方法はないでしょうか?
メッセージアプリの返信もれっきとした「証拠」
困りましたね。まずは借用書に代わるような「証拠」を積み重ねましょう。
ここでいう「証拠」とは、あなたが彼に対して10万円を渡したこととそれに対して彼が返す約束をしたことを証する何らかの物的証拠です。
そのため、メッセージアプリやメールなどでいいですから、「X年X月X日に、私はあなたに10万円貸したよね。返してね」と送り、「はい」という返信があれば、証拠と認められるかもしれません。

メッセージアプリやメールなどに彼から返信がないと、次には郵便で連絡をとることを考えてください。
内容証明郵便を利用するのがよいですが、内容証明郵便でなくても差し支えありません。ただ、内容証明郵便ですと、その内容の郵便を配達してもらったということがわかりやすいので使われることが多いです。ただし万能なわけではありません。
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明確な証拠がない場合は「一般民事調停」がオススメ
しかし、メッセージアプリ、メールまたは郵便で連絡したとしても、彼からの返事がないと、あなたが一方的に「お金を貸しましたよね、返してください」と伝えているだけで、それを彼と約束したとまでは証明できないといえます。
これだと「あなたが彼にお金を貸したという認識を持っている」ところまでしか証明できていないでしょう。
したがって、こういったあなたの彼に対する一方的な連絡と「借用書」では証拠としての価値が大きく変わってくるのです。それでも諦めたくはないですよね。
そこで、10万円ですと、ご自身で動いて返金を求めるしかないでしょう。
すでに説明した通り、明確な証拠があるとはいえない本件においては、訴訟などの手続きではあなたの望む結論が得られないかもしれません。
そこで、簡易裁判所の「一般民事調停」を利用することをおすすめします。

調停の経過や紛争の態様によっては、裁判所が、調停委員の意見を聴き、当事者の言い分を衝平に考慮し、事件の解決のために必要な決定をします。2週間以内に、異議の申立てがなければ、調停が成立したのと同じ効果が生じます。
これは離婚調停や遺産分割などの家庭裁判所で行われる「家事調停」と異なり、お金の貸し借りの問題など、一般民事を対象として、裁判所で話し合いをする手続きです。あくまでも「話し合い手続き」ですので相手方があなたからお金を借りたことを認めてくれれば、返金方法などについて調停で話し合いが成立する可能性があります。
お金を貸すときは、誰が相手でも「借用書」必須
しかし、調停にも欠点があります。それは必ず調停が成立するとは限らないことです。そうすると、結論としては、あなたのお金が返ってくるとは断言できないことになります。ただ、返ってくる可能性がゼロとはいえません。
納得いくまでチャレンジするか、あるいはこれを良い勉強の機会ととらえていただくか…になると思います。だけど、勉強になったなんて思えないですよね。そんなにすぐに切り替えることはできないと思います。
次に誰かにお金を貸すときには必ず借用書を作りましょう。
<まとめ>
●お金を貸した相手に、メッセージアプリ、メールまたは郵便で「X年X月X日に、私はあなたに10万円貸したよね。返してね」という連絡をする。
●相手から「はい」という返信があれば、お金を貸したことの証拠として認められる可能性がある。
●証拠が揃わなかった場合は、お金の貸し借りの問題などを裁判所で話し合いをする「一般民事調停」の利用がおすすめ。詳しくは、最寄りの簡易裁判所にお問い合わせを。
三輪 記子
弁護士(第一東京弁護士会)
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