「実家に帰ったとき」あることに気づいた。50年ぶりにともに暮らすことになった母親が、どうも妖怪じみて見える。92歳にしては元気すぎるのだ。日本の高齢化は進み、高齢者と後期高齢者という家族構成が珍しくなくなってきた。老いと死、そして生きることを考えていきます。本連載は松原惇子著は『母の老い方観察記録』(海竜社)を抜粋し、再編集したものです。

伴侶を亡くして、引きこもり状態の男性は結構多い

先日、サウナの中でおもしろい話を聞いた。

 

「驚いたわよ。この間テレビを見ていたら、知っているご主人が出ていたのよ。びっくりしたわ。だって、サーフィンやってるんだから」

 

話によると、サーフィンをしていた男性の妻と彼女は友人で、家族ぐるみのおつきあいをしていたそうだ。不幸なことに男性の妻が48歳で他界。60代だった彼は失意のどん底生活。何の趣味もなく暗い毎日を過ごしていたという。ところが妻七回忌の席で、彼はみんなに言ったそうだ。

 

「みなさん、大変お世話になりましたが、わたしは自然の中で暮らすことにしたのでこの地を離れます。そして再婚します」と。

 

それ以来会うこともなかった彼が、目を見張るようないきいきとした姿でテレビに出ていたのだから驚いた。自然の中に家を建て、10歳年下の女性と暮らす。奥さんを知っているだけに複雑な気持ちがしたが、彼が幸せなら、と話してくれた女性は苦笑いをした。

 

それを聞いていて、わたしはひとり、ほくそえんだ。伴侶を亡くしてひとりになった男性の寂しさを埋めるのは、新しい女性。一方、伴侶を亡くした女性は、もう新しい男性を求めない。求めるとしたら女友達か、犬猫だ。ここが男女の決定的な違いだろう。

 

伴侶を亡くして、引きこもり状態の男性は結構多いような気がする。男性はあまり口をきかないので、デイサービスに行っても寂しそうだ。この間も、「妻が死んで寂しい」と話す70代の男性がいたので、再婚するのではなく、猫を飼いなさいとアドバイスしたが、聞いていたのかどうかわからない。わたしは10歳年下の妻よりは、メス猫の方が癒してくれると思うのだが。

 

最近は、かなり高齢の男性が小型犬を抱いて歩いている姿を見かけるようになった。どっちが先かわからないような老犬だ。でも、とても幸せそうだ。犬なら文句を言わないし、財産を狙われることもない。

 

犬や猫をペットとか呼んで、自分より下の存在だと思っている人は考えを改めてほしい。
 

 

 

 

 

松原 惇子
作家
NPO法人SSS(スリーエス)ネットワーク 代表理事

 

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母の老い方観察記録

母の老い方観察記録

松原 惇子

海竜社

『女が家を買うとき』(文藝春秋)で世に出た著者が、「家に帰ったとき」あることに気づいた。50年ぶりにともに暮らすことになった母が、どうも妖怪じみて見える。92歳にしては元気すぎるのだ。 おしゃれ大好き、お出かけ大好…

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