「実家に帰ったとき」あることに気づいた。50年ぶりにともに暮らすことになった母親が、どうも妖怪じみて見える。92歳にしては元気すぎるのだ。日本の高齢化は進み、高齢者と後期高齢者という家族構成が珍しくなくなってきた。老いと死、そして生きることを考えていきます。本連載は松原惇子著は『母の老い方観察記録』(海竜社)を抜粋し、再編集したものです。

自分でやることがない施設で認知症が進む現実

これはひとり女性の団体を20年やっているわたしが発見したことのひとつだが、ひとり暮らしの人は、何でも自分でやる習慣が身についているのでボケる人も少ないように思われる。

 

つまり、甘えと楽が高齢者にとり大敵なのだ。例えば、お米など重いものを動かすときも「重くて動かせないから、息子が来たときに」ではなく、自分で工夫して動かしてみる。5キロの袋のままではなく、1キロずつ小分けにすれば動かせるかもしれない。

 

それに、高齢者の多くは毎日が日曜日で時間があるのだから、例えば一日10センチ動かせば、10日で1メートル移動させることができると考えるのはどうだろうか。

 

家族の方にも申し上げておきたい。「危ないから料理はしないで」と、絶対に母親から包丁を取り上げてはいけない。それは、母親から生きる気力を奪うことになるからだ。

 

母親を老人ホームに入れて安心していたら、認知症になっていたという話はよく聞く。それは、自分でやることがないからだ。上げ膳据え膳は一見いいように思えるが、実は、老人の機能を低下させるだけだ。

 

特に女性は料理することが身についているので、やらせるに限る。オランダでは認知症の人にも、野菜の皮むき、カットなどやらせている。日本はなんでも、危ない、危ないと取り上げてしまうので、かえってボケ老人を大量につくってしまっていると言わざるをえない。

 

高齢者には時間はたっぷりあるのだから、時間にとらわれずに作業ができる利点がある。自分でやる、と心に決めて毎日を過ごしたら、筋力もつくし、頭もボケないので一石二鳥ではないだろうか。

 

わたしからご家族の方へお願いがある。母親に料理をさせないのは、決して愛ではないということを知ってほしい。母親から家事を取り上げないでください。それが、母親に元気で生きてもらう秘訣だ。

 

 

 

 

松原 惇子
作家
NPO法人SSS(スリーエス)ネットワーク 代表理事

 

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母の老い方観察記録

母の老い方観察記録

松原 惇子

海竜社

『女が家を買うとき』(文藝春秋)で世に出た著者が、「家に帰ったとき」あることに気づいた。50年ぶりにともに暮らすことになった母が、どうも妖怪じみて見える。92歳にしては元気すぎるのだ。 おしゃれ大好き、お出かけ大好…

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