現地で日々フィリピン経済を調査している一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクター、家村均氏による株式市場分析。今週はフィリピン株式市場、そしてフィリピン経済を牽引している財閥株の現在の株価が本来の実力価値に比べて割安のなのか否かを中心に見ていきます。財閥によって事業ポートフォリオは異なり、コロナ禍の影響度によって現在の株価水準が異なってきます。そこで個別財閥銘柄の事業ポートフォリオを分析しながら、現在の株価水準を分析していきます。

LTG…国内最大の飲料メーカーを保有

次の会社は「LTG」ですが、この会社は「ルシオ・タン」の持ち株会社で、「アジア・ブルワリー」というフィリピン最大級の飲料会社を保有しています。PER5.7倍、PBR0.6倍とかなり割安だと考えています。

 

「LTG」は、「サンミゲルグループ」の最大の競争相手です。この会社は、アルコールだけでなく、ジュースなどの飲料も扱っています。また、同社は日本のアサヒビールと提携し販売するとともに、カールズバーグ、バドワイザ、クワーズ、ハイネッケンなどの輸入ビールを販売しています。

 

さらに資産規模で国内第4位の銀行、「PNB(フィリピン・ナショナル・バンク)」を所有しています。「フィリピン航空」も一部所有していますが、これは少数株主です。「LTG」に最も貢献しているのは、やはり銀行部門で、「PNB」の銀行部門と「アジア・ブルワリー」は最大の構成要素の1つです。さらには不動産開発準大手の「ETONプロパティー」を保有しています。

 

同社の飲料市場でのシェアは10%程度で、「LTG」のビジネスポートフォリオの約25~30%で、アルコールとノンアルコールが半々といったところです。

 

また、「フィリピン航空」はもちろん旅行禁止で厳しい状況に直面していますが、「PNB」は、資産のリストラを行っており、不稼動資産を削減することで資産収益率を高めようとしています。また「HSBC」からきた新CEOが辣腕を振るうだろうと期待されています。

 

「ETONプロパティー」はオフィスだけでなく、住宅も手がけています。あるプロジェクトでは、アヤラランドと提携して複合施設を建設していますが、一般的には、「ETONプロパティー」はオフィスの商業スペースが多く、住宅はほとんどありません。エリアはケソンシティ中心です。

 

また、マニラ首都圏の西側で水道事業も行っています。東側にはアヤラグループのマニラウォーターが水道事業を行っています。

 

「MPI」は、国内最大の電力会社である「メラルコ」の約45%を所有しているほか、国内の主要な高速道路の運営会社である「メトロ・パシフィック有料道路」を所有し、マニラからケソン市までを横断する鉄道の運営も行っています。「マカティ・メディカル・センター」、マニラ首都圏南部にある「Southern Hospital」、ダバオなどにも大きな病院を保有する国内最大病院運営会社という側面もある社会公共インフラに特化した企業です。

 

コロナのロックダウンによる影響を大きく受けている業種ということもあり、PER9.5倍、PBR0.6倍、株価のアップサイドポテンシャルが40%近くある大変割安な銘柄と言えます。

 

一方こういった社会公共インフラ事業は安定的な収益が望める反面、投資回収期間は、30年から40年と長いこと、政府の規制が厳しいこと、そして後継者問題があるとも言われています。ですから、財閥株の中でも最も割安感の会える銘柄である一方、最もリスクが高いとも言えます。

SMインベストメント…不動産の他、銀行最大手も

最後に「SMインベストメント」ですが、こちらはフィリピン最大の企業であり、フィリピンの大富豪ヘンリー・シーが所有する最大のコングロマリットです。事業の約30%は不動産事業で、ショッピングモールの賃貸やコンドミニアムの開発・販売を行っています。その他の事業としては、フィリピン最大手銀行「BDO」、スーパーなどの小売事業です。「SMインベストメント」はコロナの影響を受けながらも盤石な事業基盤があることから、PER37.4倍,PBR2.8倍となっており、割安感はありません。

 

以上フィリピン経済・マーケットで非常に大きな存在感を示す財閥ですが、コロナの影響で20~30%程度割安なっている銘柄もあり、コロナ後を見据えた長期投資においては、まさに仕込み時だと考えられます。

 

 

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※当記事は、情報提供を目的として、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングが作成したものです。特定の株式の売買を推奨・勧誘するものではありません。
※当記事に基づいて取られた投資行動の結果については、一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティング、幻冬舎グループは責任を負いません。
※当記事の比較するターゲット株価は、過去あるいは業界のバリュエーション、ディスカウントキャッシュフローなどを組み合わせてABキャピタル証券のプロアナリストが算出した株価を参考にしている

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