人事制度は社員の出世意欲をあおる非常に有効な手段
会社にもよるでしょうが、部長や課長になると、机の向きが反対になって、部下を見渡す形になります。また、役員になると、個室があてがわれる場合もあります。外資系の場合、ディレクタークラスは、ほぼ間違いなく個室となります。
また、日系の会社では、役員専用のお抱え運転手がつくケースもあります(最近は減ってきたと聞いていますが)。新幹線のグリーン席や、飛行機のファーストクラスが使用できるのも、分かりやすい「特権」であると言えます。以前、日系企業で役員とふたりきりで出張した際には、お供としてグリーン席に座らされたこともありました。
施策は、肩書にも表れます。事業部長や本部長にはなれなくても、「副事業部長」とか「副本部長」のように、「副○長」といった職責を用意することで、少しでも多くの社員が出世した気分を味わえるよう、工夫を凝らします(日系企業でよく見かけます)。
名刺に入る「肩書」に至っては、もっといい加減で、時には、本来とは違う職責を表記することもあります。人事制度上は、課長職でなくても、社外的な効果も兼ねて、「担当課長」のような肩書を用意する場合が、相当するのではないでしょうか(このケースは、外資系企業にも散見します)。
以上のように、会社には、社員の「出世意欲をあおる」ことで、業績向上を図ろうとする一面があり、人事制度も、有効な手段として活用されることになります。働く側からすると、「昇給、昇格して偉くなって、社内でも注目される存在になりたい」という潜在意識が刺激されるので、つい人事制度の仕組みの中で踊ってしまいます。
ところが、上に行けば行くほど、ポストの数は減ります。全員が、仲良く出世できるはずはありません。いつか、どこかで、誰かがふるいにかけられて、「出世レース」から脱落することになります。実際、多くの会社員は、自分がふるいにかけられるまで、事実を意識することはありません。
大半の社員は、「まさか自分に限って、そんな目に遭うはずはない」と信じて仕事をしています。また、そう信じていないと、仕事も前向きにできません。しかし、この事実は、会社という組織の中にいる限り、避けて通れない現実でもあります。
*****************************
中山てつや
1956年、東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。日系製造メーカー及び外資系IT企業を経て、主にグローバル人材を対象としたキャリアコンサルティングの仕事に携わる。
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】