株式投資のなかで、ヘッジ取引の方法で使われている「つなぎ売り」。上手く利用することで持ち株の含み損を軽減することができますが、初心者には少々難しい取引かもしれません。今回は、そんな株式のヘッジ取引「つなぎ売り」について紹介します。※本連載では、AI技術を用いた株価予測ソフトを開発する、株式会社ソーシャルインベストメントでトレーダーとして活躍する川合一啓氏が、個人投資家が株式市場で勝ち続けていくための極意について説明していきます。

「つなぎ売り」とはどういう取引方法?

「つなぎ売り」とは、保有している株式の株価が下がっていて、含み損が出ているとき(売却したら損失が発生するような状況)にその損失を軽減する方法として、株式を保有しながら、一方で同じ銘柄の「売り建て」行う取引です。

 

今後もその株式の下落が見込まれる場合に、信用取引で同じ銘柄の「売り建て」をすることで、売り建てをした建玉のほうでは、株価が下がるごとに含み益になるため、売り建てのほうで益を得ようとする取引です。

 

たとえば、現物株Aを1,000円で購入しましたが、800円に下がってしまったとします。この株式を今売却すると200円の損失になります。

 

下がった…(※画像はイメージ/PIXTA)
下がった…(※画像はイメージ/PIXTA)

 

しかし、さらなる下降が見込まれる場合、800円に下がった時に、同じA株を800円で売り建てすることで、もう一段600円まで下がった時に、売り建てした建玉は、200円プラスになります。

 

一方で、現物株Aのほうは、400円の損失が出ますが、売り建てのほうで200円のプラスになっているので、若干ですが、損失の膨らみを軽減することができます。

 

*手数料。諸費用は考慮していません。

 

保有株が値下がりしているが、今売却すると損失が出るので売りたくない。また、含み損を軽減する方法として使われる取引です。

 

ヘッジ取引という意味から、大きく利益を狙う取引ではありません。保有の株式の含み損を回避するという場合に使う取引です。

株の「つなぎ売り」をするためには

「つなぎ売り」をする条件としては、売り建てを行うために信用取引を開設している必要があります。そして、今後の値下がりを予想して、保有している同じ銘柄の空売りをします。

 

空売りのタイミングは、株価が下落する前の段階で新規売りをする必要があります。しかし、下落する予想や売りタイミングを掴むのことは、なかなか難しいです。

 

そのため、つなぎ売りを利用する目的のひとつとして、株価が値下がりする要因である配当落ちの調整があります。配当落ちによる株価の値下がりを予想して、それを回避する方法としてつなぎ売りを検討するのです。

 

つなぎ売りを使う場面ですが、配当の権利を得るには、権利付き最終日に保有していれば、次の日の配当落ち日に売却しても配当を受け取ることができます。そのため、理論上では、配当落ち日に配当分が調整された株価が値下がりすることが多くあります。その値下がり分を予想してつなぎ売りをするのです。そうすると、配当を受け取るために購入した株式を売却することなく、配当落ち後の値下がり分を新規売りした分が逆に差益となります。

 

ただし、一方で理論上は配当分値下がりする可能性がありますが、実際にはそんなに下がらなかった、配当落ち日だけれど値上がりしたという場合もあり、その場合は空売り(売り建て)することで損失が発生してしまいます。

 

また、注意することとしては、同じような思惑で、空売りが多くなった場合は、株券が少なくなるため、逆日歩が発生する場合もあります。特に貸株注意喚起が、出ているような銘柄は、売り建てをする前に注意をしたほうがよいでしょう。

 

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