中小企業と大企業、働くならどちらか。そんな選択肢があったなら「給料がいいから大企業」と答える人も多いでしょう。「大企業=給料もいい」という世間一般的なイメージは本当か、考えていきます。

「大企業勤務=給料が高い」と言えるのか?

――給料がいいから、できるだけ大きな会社では働きたい

――安定しているし、待遇もいいから、できるだけ大きな会社がいい

 

そんな大企業に対する信頼は、日本においてまだまだ強いように感じます。

 

厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』によると、所定内給与*(男女計、学歴計)の平均は30万7700円で、「55~59歳」で36万8600円、概算年収では「50~54歳」で590万4400円とピークを迎えます。

 

*きまって支給する給与のうち所定外労働給与以外のもの。 「所定外給与」(超過労働給与)は、所定の労働時間を超える労働に対して支給される給与や、休日労働、深夜労働に対して支給される給与のことであり、時間外手当、早朝出勤手当、休日出勤手当、深夜手当等

【年齢階級別 平均所定外給与額】

~19歳 17万9600円
20~24歳  21万2100円
25~29歳 24万4600円
30~34歳 27万4400円
35~39歳 30万5200円
40~44歳 32万9800円
45~49歳 34万7400円
50~54歳 36万8000円
55~59歳 36万8600円
60~64歳 28万9300円
65~69歳 25万7400円
70歳~ 24万7900円

 

事業規模別にみていきましょう。従業員1000人以上企業の平均所定内給与は33万8400円。100~999人企業で30万2600円、10~99人企業で27万8000円。概算年収では、順に562万4000円、477万5300円、410万9700円と、企業規模の差で150万円ほどの差が生じています。

 

――やはり、中小企業よりも大企業か……

 

このように思った人も多いでしょうが、もう少し深堀していくと、違う印象を受けるかもしれません。

 

年齢階級ごとに所定内給与額の分布を見ていきます。第1・十分位数(データを小さい順に並べた際、下位10%)では、1000人以上企業と10~99人企業で、最も差が大きくなるのは「25~29歳」で2万6100円。ほかの年代を見ても、平均値ほどの差は見られません(図表1)

 

出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より作成
[図表1]第1・四分位数で比較する、年齢階級別大企業と中企業の賃金カーブ 出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より作成

 

次に第1・四分位数(データを小さい順に並べた際、下位25%)では、1000人以上企業と10~99人企業で最も差が大きくなるのは、「40~44歳」と「55~59歳」で3万2500円。下位10%のみを見た場合よりは差が大きくなっていますが、平均値ほどの差は見られません(図表2)

 

出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より作成
[図表2]第1・四分位数で比較する、大企業と中小企業の賃金カーブ 出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より作成

 

中央値ではどうでしょうか。1000人以上企業と10~99人企業で最も差が大きくなるのは、「50~54歳」で8万8300円。下位25%と比較すると差は大きくなってきました(図表3)

 

出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より作成
[図表3]中央値で比較する、大企業と中小企業の賃金カーブ 出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より作成

 

さらに第3・四分位数(上位25%)で、最も差が大きいのが「50~54歳」で16万2400円、第9・十分位数(上位10%)で最も差が大きいのも「50~54歳」で23万7200円にもなります(図表4、5)

 

[図表4]第3・四分位数で比較する、大企業と中小企業の賃金カーブ
出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より作成
[図表5]第9・十分位数で比較する、大企業と中小企業の賃金カーブ 出所:厚生労働省『令和2年賃金構造基本統計調査』より作成

 

このように見ていくと、大企業勤務の一部の高給取りが、平均差を広げている、つまり大企業勤務だからといって、たくさんの給与をもらっているとはいえないということです。同一規模内の中で大きな格差が生まれているのです。

 

――あいつ、大きな会社で働いていて羨ましい

 

そんな羨望の眼差しを向けていた相手が、実は思ったほど給料をもらっていない……そんなことも珍しくないかもしれません。

 

 

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