<あらすじ>
主人公の橘なおみは、夫が実家の《たちばな病院》の病院長を引き受けることになったため、日本で暮らすことになった。なおみはアメリカの病院でマネージャーをしていたが、日本とアメリカとでは勝手が違う。病院長夫人となったなおみは、橘家の執事・後田から「日本の医療」について学ぶ。
医療の広告規制は「専門知識のない一般人を守るため」
医療の世界では、「情報の非対称性(サービスの提供側と受け手側で情報の量、質、理解力に格差があること)」を背景に、医師誘発需要(医師主導でサービス内容と提供が決まること)の要素がかなりの部分を占めると指摘されています。
そのため、少し昔までは医療情報リテラシーの低い医療を受ける側を「保護するため」に、広告できる事項を最小限にしてきました。
しかし、近年における「良質な医療を受けたいという国民のニーズの高まり」⇒「患者自らの判断で適切な医療機関を選択するための情報提供の整備」という流れを受け、第2次医療法改正(1992〔平成4〕年)、第3次医療法改正(1998〔平成10〕年)、第4次医療法改正(2001〔平成13〕年)、第5次医療法改正(2007〔平成19〕年)と、徐々に広告の規制が緩和されてきました。
2007年以降「OKな広告」「NGな広告」の違い
2007(平成19)年の第5次医療法改正では、医療における広告規制が大幅に緩和されました。従来の「専門医の認定」や「手術件数」のような「ポジティブリスト方式」から、一定の性質をもった項目群ごとにまとめた「包括規定方式」に改められることになりました。この改正により、同年4月以降は次のような項目が広告可能になりました。
「AGA治療薬を取り扱っております」
*薬事法等の他法令に抵触しないことが求められるため、「医薬品『XX錠』を処方できます」とは広告できません。
「当院ではジェネリック医薬品を採用しております」
「日曜・祝日も専用の透析室で、人工透析を行っています」
しかし、従来どおり、客観的な事実であっても、次のような「比較広告」は認められません。
「肝臓がんの治療では、日本有数の実績を有する病院です」
「当院は県内一の医師数を誇ります」
「本グループは全国に展開し、最高の医療を広く国民に提供しております」
ほかにも、「専門外来」(標榜診療科名と誤認を与えるため)や「死亡率、術後生存率等」「末承認医薬品(海外の医薬品やいわゆる健康食品等)による治療の内容」「著名人が治療を受けたこと」などについては広告できないことが示されています。
一方、次のような「治療の方針」については、成功率、治癒率等の治療効果等を説明することなく、広告可能な事項の範囲であれば、記載しても差し支えないとされています。
「術中迅速診断を行い、可能な限り温存手術を行います」
「手術療法のほかに、いくつかの薬物療法の適用があるので、それぞれのメリット・デメリットをご説明し、話し合いのもとで治療方針を決定するようにしております」
なお、インターネット上のホームページは、引き続き原則として広告とはみなされませんが、インターネットの検索結果に報酬を支払っている医療機関については、検索結果の表示が広告として規制されることとなります。
日本医療を支える病院の約6割が「非営利」
病院の開設者には、さまざまな母体があります。2016(平成28)年1月末時点の「開設者別にみた施設数及び病床数」によると、全病院のうち、医療法人が約6割を占めているのがわかります。
「独立行政法人国立病院機構」とは、国立病院・療養所を運営する、国とは独立した法人格をもつ法人で、2004(平成16)年4月に154施設でスタートしました(その後の再編成により、最終的には143施設)。
営利法人立は48病院ありますが、これは法成立以前に設立されたもので、現在は営利法人による病院経営は、規制改革の俎上にはのぼるものの、認められていません。
木村 憲洋
高崎健康福祉大学 健康福祉学部 医療情報学科 准教授