40兆円超でも実は安い?「医療費の増加」をデータで見ると

年々増大する日本の「国民医療費」。昨年はコロナ禍の影響を受けて減少したものの、高齢化や労働人口の減少、長寿化など、医療費増大の原因が解消されたわけではありません。膨らみ続ければ、日本の財政が破綻しかねないとも言われています。しかしGDP比で見てみると、実はそれほど多いわけではありません。実際のところ、国民医療費はどのような状況なのでしょうか。様々な視点からデータを分析してみましょう。※本連載は、木村憲洋氏の著書『マンガでやさしくわかる 病院と医療のしくみ』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集したものです。

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「医療費の増加」は税金を徴収するための口実?

近年、日本の医療費が増加中であるとの報道をよく目にします。国民医療費も30兆円を超え、2014(平成26)年には、42兆円を超えました【図表】。

 

(出所)厚生労働省 平成28年度国民医療費の概況
【図表】国民医療費・対国内総生産・対国民所得比率の年次推移 (出所)厚生労働省 平成28年度国民医療費の概況

 

日本の借金の拡大の原因が医療費の増加にあるかのような報道を耳にすると、「医療費を抑制しなければいけないのではないか」との錯覚に陥ってしまうかもしれません。

 

医療費の増加は、健康保険料の増額、介護保険や後期高齢者医療保険、消費税率の上げなどの言い訳にされることが多いのも事実です。これらの保険料などの増額は、実質的には、国民から保険という名の税金を徴収するための政府の口実なのかもしれません。

 

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GDP比で見ると、日本の医療費はそれほど多くない

さて、ここで国民医療費について説明します。国民医療費は病院や診療所の保険診療にかかわる費用、医療保険で提供される訪問看護の費用、薬局の保険給付される費用や、他施術所の保険診療分などの合計とされています。

 

一方で、国民医療費の対象外とされている費用は、正常妊娠・分娩や健康診断、人間ドック、介護保険が適用されるサービス、薬局で販売する一般薬となっています。

 

日本の医療費が伸びている状況は、厚生労働省から毎年国民医療費として公表されています。国民所得(GDP)比はOECDヘルスデータ2018によると、加盟国中6位となっています。

 

医師数は、人口10万人あたりの比較で、OECDの平均280人に対して日本は243名となっていますが、CTやMRIといった機器の普及はOECD加盟国の平均の4倍、平均在院日数は加盟国の平均の3倍となっています。日本は、医師が少ないのを機器や設備で補っているかのようです。

 

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医療費の多くを「高齢化」が占めているというデータ

2016(平成28)年は国民医療費42兆円のうち、保険料で49.1%と約半数を賄っています。また、公費は38.6%で約3分の1、残りは患者の自己負担が11.5%で約8分の1程度となっています。

 

制度区分別の国民医療費は、医療保険別の国民医療費を示しています。国が負担する特殊な医療とされる公費負担は7.5%、一般的に社会保険(被用者保険23.1%)や国民保険(国民健康保険22.6%)といわれる医療保険は45.7%、後期高齢者医療給付分は33.6%、患者負担が12.2%、その他が0.7%です。

 

ここで気になるのが、国民医療費の約3分の1を占める後期高齢者医療給付分の大きさで、この部分の伸びは、医療費抑制という日本の医療政策における課題を現しています。

 

診療種類別の国民医療費は、医科診療医療費と歯科診療医療費、薬局調剤医療費、入院時食事医療費、訪問看護医療費に分けられます。

 

医科診療医療費は入院医療費と入院外医療費(外来通院医療費)に分けられ、さらに病院分と診療所分に分けられます。医科診療医療費71.6%の内訳は、入院医療費37.5%(病院36.6%、一般診療所0.9%)です。入院外医療費は34.2%で、病院14.4%、一般診療所19.8%となっています。この数字から、収益構造は、病院が入院中心、一般診療所が入院外医療(外来)中心であることがわかります。

 

次に歯科診療医療費は6.8%となっています。薬局調剤医療費は18.0%で、歯科診療医療費の約2.5倍となっています。この薬局調剤医療費が大きい理由は、これまでの医薬分業という病院や診療所で処方された薬をもらうのでなく、薬局で処方された薬をもらうように医療政策で誘導したため、薬剤費用が薬局に移動したためです。

 

最後に、入院時食事・生活医療費は1.9%、訪問看護医療費は0.4%となっています。

 

年齢階級別の国民医療費は、65歳未満40.3%、65歳以上59.7%、そして、70歳以上47.8%、75歳以上36.5%と、年齢が高くなるほど国民医療費に占める割合が高くなっています。

 

同じく2012年(平成24年)の国民医療費と医療機関の費用構造についての推計を見ると、医療機関の費用構造で特徴的な部分は、医療サービス従事者(医療従事者:人件費)の費用が47.9%で約半数を占めています。

 

次に、医薬品費22.2%、医療材料6.2%となっています。これら人件費と医療に直接かかわる材料費で76.3%と国民医療費の4分の3を占めているのです。また、残りの約4分の1の委託費やその他については、医療機関の水道光熱費や建物などの設備も含まれています。

 

これらの統計データをみると、日本における高齢化が医療費の多くを占めている状況がわかる一方で、GDPに占める医療費の割合が少ないこともわかります。これは、日本の医療費が低いことを表しているのかもしれませんし、現役世代が負担した割に医療サービスを受け取っていないことを表しているのかもしれません。

 

さらに医療は40兆円産業とされ、企業にとって新たなマーケットとの指摘もありますが、国民医療費の半分が人件費、医薬品などの材料費が4分の1、残りが4分の1という状況をみると、医療分野への参入は綿密に検討を重ねたうえで行わなければうまくいかないのではないでしょうか。

 

また、国民医療費の約5分の1(8兆円以上)を占める医薬品の中で、特許が切れた少数の医薬品をジェネリック医薬品に置き換えていくことが国民医療費にどれだけ効果があるのかについても疑問もあります。むしろ薬価を一律に1%切り下げたほうが効果的かもしれません。

 

 

木村 憲洋

高崎健康福祉大学 健康福祉学部 医療情報学科 准教授

 

 

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高崎健康福祉大学 健康福祉学部医療情報学科 准教授

1971年栃木県足利市生まれ。

1994年武蔵工業大学工学部機械工学科卒業後、民間病院を経て、現在、高崎健康福祉大学・健康福祉学部医療情報学科准教授。

【主な著書】
『病院のしくみ』『医療費のしくみ』『薬局のしくみ』『看護のしくみ』
(すべて日本実業出版社刊、共著)
『病院経営のしくみ』(日本医療企画刊、共著)

著者紹介

連載マンガでわかる病院と医療のしくみ

マンガでやさしくわかる病院と医療のしくみ

マンガでやさしくわかる病院と医療のしくみ

著:木村 憲洋
シナリオ制作:ユニバーサル・パブリシング
作画:山中 孝二

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