新型コロナのPCR検査は「感度が低い」、すなわち「陽性者の見逃しが多い」ことで知られています。最近は「感度90%以上」というものも出ていますが、感度が上がった=陽性・陰性を正確に判定できるようになったというわけではありません。「検査絶対主義」に陥りがちな日本人に、現役医師が「医学常識の嘘」を明かします。※本記事は、岩田健太郎氏の著書『僕が「PCR」原理主義に反対する理由』(集英社インターナショナル、2020年12月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。

感度70パーセントは「10人中3人の陽性を見逃す」が…

あらゆる検査には間違いが起こります。

 

検査の正しさを示す指標に、「感度」というものがあります。これは「病気を見逃さない能力」のことです。たとえば感度100パーセントの検査なら、本当に病気がある人はすべて、陽性と判定されます。感度70パーセントの検査なら、本当に病気がある人が10人いたとき、そのうちの3人は陰性と判定されます。つまり、病気がある人を3人、見逃してしまうわけです。

 

もう1つ、「特異度」という指標があります。こちらは、病気ではない人を正しく「病気ではない」と判定する能力です。

 

たとえば特異度100パーセントの検査であれば、本当に病気がない人はすべて、陰性と判定されます。特異度70パーセントの検査なら、本当に病気がない人が10人いたとき、そのうちの3人は陽性と判定されます。つまり10人のうち3人は、本当は病気ではないのに病気だと判定されてしまう。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

感度100パーセント、特異度100パーセントの検査は、もちろん理想的です。しかし、そのような検査は現実世界には存在しません。これから先、どんなに科学が進歩しても、そうした完璧な検査法は開発されないでしょう。

 

それはなぜか。ある検査の感度を上げるためには「病気と判定する基準」、つまり閾値を下げていくことになります。たとえば、「1万個以上のウイルス遺伝子が検体から見つかれば陽性」という基準があったとして、それを「1000個以上のウイルス遺伝子が見つかれば陽性」と変更すれば、「本当に病気の人」を見逃してしまう確率は、理論的には下がります。

 

しかし閾値を下げると、特異度も下がってしまうというジレンマが起きるのです。「あなたは病気ではありませんよ」と判定されたけれども、「実は病気だった」という人が増えてしまう、という現象が起きるのです。つまり、感度と特異度はトレードオフの関係にあるわけです。

 

次ページ感度を高めれば「冤罪」が増えるという事実
僕が「PCR」原理主義に反対する理由 幻想と欲望のコロナウイルス

僕が「PCR」原理主義に反対する理由 幻想と欲望のコロナウイルス

岩田 健太郎

集英社インターナショナル

なぜ、ノーベル賞科学者でさえも「コロナウイルス」が分からないのか? その理由は日本人独特の「検査至上主義」にあった! 人間の体は宇宙よりも謎に満ちていて、素粒子よりも捉えがたい。そのことを知らないで、「机上の…

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