感度70パーセントは「10人中3人の陽性を見逃す」が…
あらゆる検査には間違いが起こります。
検査の正しさを示す指標に、「感度」というものがあります。これは「病気を見逃さない能力」のことです。たとえば感度100パーセントの検査なら、本当に病気がある人はすべて、陽性と判定されます。感度70パーセントの検査なら、本当に病気がある人が10人いたとき、そのうちの3人は陰性と判定されます。つまり、病気がある人を3人、見逃してしまうわけです。
もう1つ、「特異度」という指標があります。こちらは、病気ではない人を正しく「病気ではない」と判定する能力です。
たとえば特異度100パーセントの検査であれば、本当に病気がない人はすべて、陰性と判定されます。特異度70パーセントの検査なら、本当に病気がない人が10人いたとき、そのうちの3人は陽性と判定されます。つまり10人のうち3人は、本当は病気ではないのに病気だと判定されてしまう。
感度100パーセント、特異度100パーセントの検査は、もちろん理想的です。しかし、そのような検査は現実世界には存在しません。これから先、どんなに科学が進歩しても、そうした完璧な検査法は開発されないでしょう。
それはなぜか。ある検査の感度を上げるためには「病気と判定する基準」、つまり閾値を下げていくことになります。たとえば、「1万個以上のウイルス遺伝子が検体から見つかれば陽性」という基準があったとして、それを「1000個以上のウイルス遺伝子が見つかれば陽性」と変更すれば、「本当に病気の人」を見逃してしまう確率は、理論的には下がります。
しかし閾値を下げると、特異度も下がってしまうというジレンマが起きるのです。「あなたは病気ではありませんよ」と判定されたけれども、「実は病気だった」という人が増えてしまう、という現象が起きるのです。つまり、感度と特異度はトレードオフの関係にあるわけです。