年を取ったら、「民間の保険」より「貯蓄」を優先
病気に対する備えは公的医療保険があれば十分で民間の保険は不要です。
例えば入院した時に多額の治療費や入院費がかかっても高額療養費制度を使えば自己負担は少なくて済みます。仮に入院費が月100万円かかったとしても、個人が負担するのは8万7430円(※69歳以下、年収約370万〜770万円の場合)です。
特に70歳以上の場合、現役時代と同じぐらい稼いでいる人は別として年収が約156万〜370万円の人、すなわち年金だけの収入の人であれば、自己負担の上限は5万7600円です。
民間の保険であれば年を取れば取るほど保険料は高くなるのが普通です。年を取ると病気のリスクが高くなるのは当然だからです。ところが公的医療保険は逆に年を取るほど負担が少なくなる仕組みになっているのですから明らかにお得です。
基本は公的医療保険があれば十分で、それでまかなえない部分だけ、自分の貯金から使えば良いのです。これは介護の場合も同様で、公的介護保険ではカバーできない諸費用については民間の介護保険に入るよりも貯金しておく方が合理的です。
お金の良いところは、貯めておきさえすれば使いみちは後で自由に決められることです。仮に介護が不要だったり、病気をしなかったりしたのであれば、他の楽しみに使うこともできるのが貯蓄の良いところなのです。
したがって、保険に入るぐらいなら、払い込む保険料を貯蓄に回す方が良いでしょう。目的を限定した保険というのは、「自分のお金でまかなえないような巨額の支出に備える」というのが本来の使い方で、やはり原則は自分でお金を蓄えておくことです。
貯蓄や退職金を延命させ、「働いて得る収入」で楽しむ
そういう観点で老後を考えてみると、自分の持っている貯蓄や退職金などはできるだけ使わずに先延ばしした方が良いのです。その辺りの原理原則は、以下の3つです。
① 日々の生活は公的年金でまかなうようにする
② 趣味や楽しみのための費用は働いて得る収入やそれを貯めた資金でまかなう
③ 退職金や自分の保有する金融資産はできるだけ取り崩さず、将来に備える
もう少し詳しく解説すると、この3つのルールの内、絶対に守るべきことは③の「金融資産は取り崩さずに将来に備える」ということです。
仮に①のルールが守れず、日々の生活費が年金だけではまかなえないのならその補塡を退職金や貯金から出すのではなく、働いて得た収入から補塡すべきです。その場合は②の趣味や楽しむための費用は少しセーブする必要があるでしょう。
つまり年金及び働いて得る収入で生活を楽しみ、将来のリスクに備えるために退職金や貯蓄を延命させることが大事なのです。
けれども、結局使わないまま死んでしまったらもったいないじゃないか、と思われるかもしれません。それは確かにその通りでしょうが、人間はいつ死ぬか誰もわかりません。それに、そもそも死んでしまえばもったいないも何もありません。
ここで言っているのはケチケチと節約をしながらお金を貯め込んでいこうということではなく、定年後も人生はおおいに楽しむべきだということなのです。
そのために働いて得る収入で人生を楽しみましょう、そして持っている金融資産は、その寿命をできるだけ延ばして将来のリスクに備えましょう、という主義でいくべきではないでしょうか。
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