いま、弁護士や税理士などの士業は過渡期を迎えようとしています。「AIに仕事が奪われる」との声も……。しかし、士業のすべてなくなるわけではなく、人間にしかできない仕事がまだまだあります。AIやITなどの技術革新が続くなか、士業の仕事に付加価値をつける方法を税理士、公認会計士、心理カウンセラーとして活躍する著者が明らかにします。本連載は藤田耕司著『経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部を抜粋し、再編集したものです。

資格は手段であって目的ではない

資格がビジネスの自由な発想を妨げていないか

 

AI時代に向けて自動化されにくい業務の獲得を進めるうえで、参謀あるいは経営参謀といった形でより深くお客様に関与する「縦方向」の展開に加えて、従来の発想の枠を取り払ってビジネスモデルを考える「横方向」の展開もできるようになると、より大きな可能性が見えてきます。また、経営参謀として経営に深く関わるようになると、ビジネスに対する視野が広がり、さまざまなビジネスチャンスに気づけるようになります。

 

ところが、資格を持っていると、横方向への展開の障壁になる場合があります。

 

「この資格を取得するために相当な時間も費用もかかった。それだけ苦労して取得した資格なんだから、使わないともったいない」という心理がビジネスの発想の幅を狭めます。もし、資格がなければ、「ここに消費者のニーズがある。それなりの事業規模も見込めそうだ」と思えば自由に発想してビジネスを興すかもしれません。

 

税理士の資格取得はそれ自体が目的ではなく、自らの可能性を広げるための手段として考えていたという。(※写真はイメージです/PIXTA)
税理士の資格取得はそれ自体が目的ではなく、自らの可能性を広げるための手段として考えていたという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

しかし、そのようにビジネスを始める士業は多くはなく、「自分は〇〇士の資格を持っているのだからその仕事をすべきだ」という考えの枠にとらわれてしまいがちです。

 

やりたい仕事かどうかは別として、そういった考えの枠が理由で士業としての仕事をしているのであれば、そしてその仕事が今後AIやITに取って代わられる可能性が高いのであれば、その仕事に固執することなく、発想の枠を広げてもよいのではないでしょうか。

 

仕事を広げる活動をしないリスク

 

私は2004年に公認会計士試験に合格し、その後、税理士の資格も取得しますが、私にとって資格の取得はそれ自体が目的ではなく、人生の自らの可能性を広げるための手段として捉えていました。そのため、試験の合格発表前には神社で「会計士になったほうが幸せな人生を送れるならば合格させてください。そうでないならば落としてください」とお願いしました。なぜなら資格は手段であって目的ではないと考えていたからです。

 

私が公認会計士試験に合格し、監査法人に入所した直後に始めたのが、経営者と士業の交流会の主催です。さまざまな業界の経営者と士業の方をお呼びして、それぞれの業務の内容と抱えている課題を聴き、ビジネスで協業できそうな人の橋渡しをして、新たに知り合った人々とまた飲みに行っていました。

 

こうした活動を通じて、経営者が抱える課題や事業を伸ばすことができた理由、各業界の生の動向や裏話など、多くの貴重な情報を得ることができており、いまも幅広い業界の方々と継続的なつながりを持っています。

 

次ページ資格は「使われる」ものではなく「使う」もの
経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

経営参謀としての士業戦略 AI時代に求められる仕事

藤田 耕司

日本能率協会マネジメントセンター

AIの利用が広がるにつれ、多くの士業が「定型的で単純な手続き業務はAIに取って代わられかねない」と危機感を強めています。 起業して新事業を始めたり、いち早くAIを取り入れたりするなど、業務の見直しに取り組む動きも出始…

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