コロナ禍で厳しい状況に追い込まれている人が増えていますが、そのなかには学生も。仕送りは減り、アルバイトの収入も減りと、苦しい生活を送っている若者が増えているのです。そこで頼りになるのが奨学金ですが、借りたはいいが返済することができない延滞者も多いのが現状。果たして、奨学金の返済はどれくらい大変なものなのでしょうか。

「奨学金の延滞」を甘くみてはいけない

――月に1万7000円の返済が厳しいなんてことあるのか?

 

そう思う人もいるでしょう。厚生労働省『令和元年賃金構造基本統計調査』によれば、20~24歳の平均賃金は21万3400円、25~29歳で25万1600円、30~34歳で29万800円、35~39歳で32万8400円(関連記事:『20~30代「賃金分布表」』)。

 

さらに第1・十分位数(低い方から数えて全体の10分の1番目に該当する賃金)は、20~24歳で16万9100円、25~29歳で18万7200円、30~34歳で20万800円、35~39歳で21万800円。手取り額はそれぞれ、12万円、14万円、15万円、16万円。

 

第1・四分位数(低い方から数えて全体の4分1の番目に該当する賃金)は、20~24歳で18万7800円、25~29歳で21万4500円、30~34歳で23万4500円、35~39歳で25万2100円。手取り額はそれぞれ、14万円、16万円、18万円、19万円。

 

中位数(低い方から数えて全体の2分1の番目に該当する賃金)は、20~24歳で20万9900円、25~29歳で24万2900円、30~34歳で27万5200円、35~39歳で30万5900円。手取り額はそれぞれ、16万円、18万円、20万円、23万円。

 

手取り額で見ていくと、賃金が同年代の半数以上を上回っていないと、大学卒業後の20代前半ばかりか、30代後半であっても、月1万7000円の返済は厳しいものがあります。

 

奨学金の延滞は、経済的な理由が多くを占めますが、そもそも借りる前の認識が甘い、ということもありそうです。独立行政法人日本学生支援機構によると、奨学金の返還義務を知った時期として、延滞者に限ると「申込手続きを行う前」が51.1%。さらに貸与終了後に返還義務を知ったという強者ものも20.1%に上ります。

 

すべての延滞者というわけではありませんが、延滞者になるべくしてなったといっても過言ではないのです。

 

奨学金の延滞くらいと気軽に考えていると危険です。

 

延滞が発生すると、まず文章や電話による働きかけが行われます。そして延滞発生3ヵ月後には、債権会社への業務委託が行われ、延滞に関して記録されます。ここでの「延滞」は「長期延滞」と呼ばれ、いわゆる金融事故の扱いになるのです。さらに9ヵ月を過ぎると支払督促申立の予告が行われ、順次、裁判所へ支払督促の申立てが行われます。

 

このような状態のとき、住宅や自動車、クレジットカード、さらには携帯電話の割賦契約も組めなくなります。延滞の事実が信用情報に登録、つまりブラックリストにのるためで、以降はローンの審査には通りづらくなります。

 

平成28年度、奨学金の返済者は410万人。そのうち3ヵ月以上の延滞者数は年々減少傾向とはいうものの、16万1000人にのぼります(独立行政法人日本学生支援機構調べ)。学生は経済的にも厳しい状況にいますが、きちんと奨学金の仕組みを知ってから利用しないと、厳し過ぎる未来がまっています。

 

 

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