後妻の親族ではなく、前妻との子に財産を遺すには?
一郎は、自分が亡くなったら遺産のすべて(自宅マンションや現預金等)を花子に相続させたいと考えています。
しかし、その後、花子が亡くなった場合には、残った自宅マンション等の資産は、花子の相続人ではなく賢一に遺してあげたいと思っています。
<解決策>
後藤一郎は、夫婦で親交のある信頼できる親戚山田との間で信託契約公正証書を作成します。その内容は、委託者兼当初受益者を一郎、受託者を親戚山田、自宅および大半の金融資産を信託財産とします。
夫婦の終の棲家としての自宅と老後の資金は、一郎が自分でやりくりできる能力がなくなっても有効活用できるように、受託者である親戚山田に管理を託しておきます。一郎が先に死亡した場合は、遺される花子の生活の場および生活費の確保のため、第二受益者を花子にします。そして、一郎および花子の死亡により信託が終了するように定め、信託の残余財産の帰属先を前妻との子賢一に指定します。
その一方で、一郎は遺言公正証書も作成し、信託財産で網羅できなかった信託財産以外のすべての遺産を本件信託契約の信託財産に追加信託します。それにより、実質的に花子がすべての遺産を相続することになるので、その引き換えに、花子は賢一に対し遺留分相当額に満つるまで毎月分割で代償金を支払う旨の負担付の遺言条項を設けておきます。
委託者:後藤一郎
受託者:親戚山田
受益者:①後藤一郎②後藤花子
信託財産:自宅および現金
信託期間:一郎と花子が死亡するまで
残余財産の帰属先:前妻との子賢一
<要点解説>
通常の相続では、後妻花子に確定的に移転したマンション等の財産を賢一に承継させるには、花子にその旨の遺言書を書いてもらう必要があります。しかし、それは花子の意思次第のため、花子の気持ちが変われば、一郎の知らない間や一郎の亡き後に遺言書を書き替えられてしまうリスクがあり、賢一が資産を承継できる保証はありません。
このような解決策を講じることで、花子の遺産について相続権のない賢一にもマンション等の財産を交付できることになります。
また、一郎の遺言において、賢一の遺留分に配慮し、花子に遺留分相当の金銭を賢一に分割で支払わせることで、花子への遺留分侵害額請求の余地を排除するとともに、花子が遺留分相当額の一括支払いをしなくて済むというメリットを得ることができます。
宮田浩志
宮田総合法務事務所代表
※本記事の事例に登場する名前はすべて仮名で、個人が特定されないよう内容に一部変更を加えております。
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