80代になればほぼ100%の確率で発症する病気、「白内障」。白内障手術は症例が多いことから治療技術の発達が凄まじい分野です。いまでは白内障のみならず、近視や遠視、乱視や老眼なども治せる眼内レンズが登場しました。手術方法や眼内レンズ選びによっては、手術後はメガネをかけなくても「よく見える目」になるとも…。メガネいらずの目になる方法とは、どのようなものでしょうか?

「日本国内では売っていない高性能レンズ」も使用可能

白内障治療では、海外で販売されている高機能プレミアム眼内レンズを用いることができます。日本国内ではまだ認可されていない製品ですが、海外では各国の承認を受けて白内障治療に使われているもので、希望があれば、医師の責任と判断で海外からとり寄せて使うことができます。

 

海外のプレミアム眼内レンズには、オーダーメイドのものもあります。患者の眼の状態や屈折率などのデータを眼科医が計測してメーカーに送り、その人専用の眼内レンズを設計・生産してもらうのです。既製品の中からその人にあうものを選ぶのではなく、その人の眼にぴったりあった製品をつくってもらうわけですから、確率的には装着したときに高い満足感が得られるのですが、あくまで予測でしかありません。

 

どんなによいレンズを選んでも、狙った度数が実現できるのは9~9.5割にとどまります。それよりも、術中に水晶体をとり除いてから度数を測る「ORA」などを使って、実際の見え方を補正することが大切です。

 

こうした海外の眼内レンズは、費用はすべて自費になるので高額ですが、これまでの眼鏡やコンタクトレンズの矯正視力に不満を感じている人や、近視や乱視が強く、ほかのレンズでは思うような視力が出ない人、より質の高い見え方を求める人にとっては、検討する価値があるものです。

 

ただし、選定医療の認定になっているものに比べて国の許可がおりていないため、レンズにトラブルがあって入れ替えなければならない場合も自己負担になるなど、保障やアフターフォローがない点は気をつけなければなりません。

海外で大注目の「メガネがいらなくなる」眼内レンズ

最新の眼内レンズでは、EDOF(Extended Depth of Field:イードフ)というタイプも登場しています(⇒【画像:眼内レンズの「種類・特徴」早見表】)。

 

これは焦点深度(ピントがあう距離)を広げることでクリアに見える範囲を拡大し、遠景から中間距離まで連続してなめらかに見えるようにしたものです。スマートフォンのアイフォンもこの技術を使用していることは有名です。脳の高次処理機能によってぼけた像を補正するため、従来の多焦点眼内レンズの弱点だったハローやグレアも軽減されますが、脳の働きに依存するため一人ひとり見え方が違うことがあります。

 

海外のプレミアム眼内レンズで注目されているのは「EDOFレンズ」+「トリフォーカルレンズ」です。

 

国内で認可されている多焦点レンズのトリフォーカルレンズは2焦点レンズの特徴と構造の組み合わせで「遠く」「中間」「近く」の3点に焦点があうのが特徴です(図表1、2)。

 

[図表1]3焦点のトリフォーカルレンズ①

 

※D:眼内レンズの度数を表す単位
[図表2]3焦点のトリフォーカルレンズ② ※D:眼内レンズの度数を表す単位

 

これに対して海外では、オーダーメイドのタイプだけでなくEDOF+トリフォ型のレンズがあります。この眼内レンズは、「遠く&近く」の2焦点デザインと、「遠く&中間」のEDOFデザインを組みあわせることで、3焦点を実現しています。国内の3焦点レンズと同様に遠景から手元まで、非常に広い範囲がクリアに見えつつ、直景から中距離までも連続してなめらかに見えるようになっています。

 

こうした海外の多焦点眼内レンズのよさを実感するいちばんのポイントは、「ほとんどの人が眼鏡のわずらわしさから解放される」ことでしょう。

 

2018年1月に京都で開催された眼科手術学会では、「海外のプレミアム眼内レンズを入れた患者の9割以上の人が眼鏡を使わずによく見えるようになった」という報告もありました。

 

この学会で私は、白内障治療で海外の多焦点眼内レンズを自分自身の眼に入れた眼科医の体験を話してもらうセミナーを企画しました。眼内レンズを入れたときにどのように見えるのかというのは、厳密には、体験した本人でないとわかりません。精密な眼の手術を仕事とする白内障の専門医たちが、海外の多焦点眼内レンズを入れてどのような視力になったのかは、私も非常に興味をもって聞きました。

 

体験を話してくれた4人の医師が選択した眼内レンズは、「レンティスMプラス(分離屈折型2焦点)」「ファイン・ビジョン(回折型3焦点)」「テクニス・シンフォニー®(回折型EDOF)」(図表3)など。

 

[図表3]EDOFレンズ「テクニス・シンフォニー®」

 

手術法も通常の手技によるもの、フェムトセカンドレーザーによるものなど、さまざまでしたが、術後のハロー・グレアも数日から1ヵ月ほどで慣れ、日常生活から診療、手術まで問題なくできる快適な視力を取り戻したということでした。ちょっとした見えにくさは脳が補正をしてくれるので、術前に想定した視力よりもよく見えるとの感想もありました。

 

ある一人の眼科医は、デメリットとして、自動車の運転で夕方や明るい交差点を通行時に、ハロー(光がにじんで見える現象)が生じやすいことを挙げていました。しかしそれ以外は大きな不都合はないということで、総じて高い評価という印象でした。

 

もちろん、だからといって、すべての人に海外の多焦点眼内レンズが最適というわけではありません。こうした海外のプレミアム眼内レンズはまだ開発されて時間がそれほど経過していません。メリットがある一方、現時点で自覚されていないものも含め、副作用がある可能性は残ります。紹介した眼科医の体験もひとつの参考として捉えていただければと思います。

高級眼内レンズを使わずに「メガネいらず」になる方法

多焦点眼内レンズとは別に、手術後に眼鏡なしで生活を送れる方法があります。それが「モノビジョン法」です。

 

これは左右の眼内レンズの度数を調整し、一方のピントを遠くに、他方を近くに合わせる方法です。左右の眼がそれぞれ近くと遠くを認識するため、両眼で見たときに遠くも近くもある程度、見ることができます。

 

ただし、左右での視力差が出てくるため遠近感がつかみにくく、またはっきり感(コントラスト)が低下するといった問題もあるため、誰にでも適した方法とはいえません。希望する場合は医師の十分な説明と、本人の理解が重要になります。

 

モノビジョン法は両眼とも単焦点レンズを使用するときは、保険適用の手術で行うことができます。

 

またやや特殊な方法ですが、片眼に単焦点眼内レンズを入れ、もう一方の眼に多焦点眼内レンズを入れるケースもあります。この場合は、費用は自費(または一部選定医療対象)になります。

 

この方法は、遠くから近くまで全体が見えるようになりたいけれども「見たい部分をよりクリアに見る」「多焦点眼内レンズの弱点のハロー・グレアを減らす」「コントラスト低下を軽減する」といった効果を期待して行うものです。

 

やはり眼内レンズの種類にかかわらず、医師から十分な説明を受け、それぞれの特性を理解・納得したうえで決めてほしいと思います。

 

 

市川 一夫

日本眼科学会認定専門医・認定指導医、医学博士

 

市川 慶

総合青山病院 眼科部長

 

 

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    ※本連載は、市川一夫氏・市川慶氏の共著『「一生よく見える目」を手に入れる白内障手術 改訂版』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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    市川 一夫

    市川 慶

    幻冬舎メディアコンサルティング

    自分の目に合う白内障手術とは? 約8万眼の白内障手術を行ってきた日本トップクラスの白内障専門医が徹底解説! 「レンズは何を選べばいいの?」 「手術に失敗したらどうする?」 「レーザー手術がいいっていうけれど本…

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