「確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

所得控除を家族の誰に付けるかは税率から判断

ところが、じっさいには妻の社会保険料も夫が支払っていたのであれば、夫の社会保険料控除を60万円、妻の社会保険料控除をゼロにすることができます。

 

これがなぜ節税につながるのかというと、所得税の場合、所得の多い人に多くの所得控除をつけたほうが、節税効果としては大きいからです。極端な話、専業主婦で所得がゼロの人にいくら所得控除を増やしたところで、意味がありません。

 

では、冒頭の設問を考えてみましょう。一見、収入が大きい妻の所得控除を増やしたほうがいいような気がします。でもじつは違うのです。

 

給与は総合課税の給与所得、株式の売却益は分離課税の譲渡所得ということを思い出してください。所得税は、総合課税の場合は税率が5〜45%ですが、株式の譲渡所得では一律15%です。

 

そこで冒頭の設問に戻ると、給与収入1000万円ということは、所得控除の額にもよりますが、税率は23%もしくは33%になると考えられます。つまり、妻の株式の譲渡所得に対する税率15%よりも高くなるわけです。これが、妻よりも夫のほうに医療費控除をつけたほうがいい理由です。このように、所得控除を家族の誰につけるかは、収入金額に加えて、税率の違いも理解したうえで判断するようにしましょう。

 

このあたりの判断に迷う場合は、国税庁のホームページの「確定申告書作成コーナー」に数字を打ち込むと、税額のシミュレーションをすることができるので、利用してみてください。

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年2月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

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