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現段階で日本政府が承認した新型コロナワクチンは、ファイザー製のみであり、アストラゼネカ、モデルナ製が承認申請を行った。
厚労省などによれば、2回接種を前提とした場合、ファイザー7,200万人分、アストラゼネカ6,000万人分、モデルナ2,500万人分の調達を契約しており、合計すると1億5,700万人分で国民全体に接種可能な量だ。
河野太郎担当大臣は、3月12日の会見において、ファイザー製に関し5月に2,150万人分、6月はそれ以上が供給される見込みであると発表した。このスケジュールならば、3、4月分の846万人分と合わせ、5,200万人程度への接種を7月中にも終えることになる。
先行接種が始まった医療従事者に加え、高齢者、基礎疾患のある人、高齢者施設の従事者への接種が一巡することになるだろう(図表1)。
もっとも、高齢者、基礎疾患のある人を除く一般国民への接種は、早くても今夏以降となる。また、ワクチンは世界で奪い合いになっており、日本政府の想定通りに調達できるのか、不透明感が完全に払拭されたわけではない。
さらに、新型コロナは、英国、ブラジル、南アフリカに加え、フィリピン由来の変異株が確認された。これら変異株は、従来型に比べて感染力が強く、重症化し易いとの見方があるなか、ワクチンの効果について検証が行われている。
既に国内でも変異株への感染、死亡が確認された。仮に変異株に対するワクチンの効果が明確となった場合でも、日本全体にワクチン接種が広がらなければ、海外との間で人の行き来を再開するのは極めて難しいだろう。
特に菅義偉首相は、衆議院の解散時期について、自らの自民党総裁としての任期満了に近い9月を想定、10月に総選挙が行われる可能性が強まっている。オリンピックは7月23日~8月8日、パラリンピックは8月24日~9月5日に行われる予定だ。
この時期に大規模な訪日客を受け入れた場合、総選挙の時期に新型コロナの感染がピークを迎えている可能性は否定できない。そうしたリスクを考えれば、五輪に海外からの観客を受け入れることは現実的ではないだろう。
宿泊・飲食業界:淘汰や大規模な業界再編の可能性
2020年の訪日外客は411万6千人だった。もっとも、新型コロナの影響がほとんどなかった1月が266万1千人であり、4~9月は合計でも3万3千人に過ぎない(図表2)。入国規制を一部緩和した11月以降は月間4~5万人台のペースだ。五輪期間中は選手、大会関係者、メディア関係者などで多少の増加はあっても、年内はこの規模が続くのではないか。
2020年末、東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県において、従業員100名以上の宿泊施設は240であり、5年前と比べて45増加していた。もっとも、昨年の客室稼働率は31.4%に過ぎない。
期待していた五輪需要が不発に終わり、2022年以降も劇的な稼働率の上昇が見込めないとすれば、飲食業なども含めた関連業界は、むしろ五輪後に淘汰や大幅な業界再編が避けられないだろう。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『訪日外国人の本格的受け入れ再開は2022年』を参照)。
(2021年3月19日)
市川 眞一
ピクテ投信投資顧問株式会社
シニア・フェロー
日本経済の行方、米国株式市場、新NISA、オルタナティブ投資…
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