社内に後継者が不在で、第三者に経営を委ねる方法2つ
A. 後継者が不在な状況にある場合、経営者としては、会社を廃業するのか、それとも社外の第三者に会社経営を委ねるのかを選択することになります。会社の事業が継続できる状況である場合には、従業員の雇用を継続・確保し、また取引先や顧客に迷惑をかけないようにするためには、廃業ではなく、第三者に会社経営を委ねる方法を検討することになります。
この第三者に会社経営を委ねる方法としては、①第三者に社長業を委託する場合と、②会社ごと第三者に譲渡する場合がありますが、中小企業において、社長業を引き受けてくれる会社経営の経験者は極めて少なく、見つけることは至難の業となっていることから、時間的余裕がない場合には第三者に会社を譲渡する方法を検討することになります。
このように会社を第三者に譲渡することを、「M&A」(企業の合併や買収)と言います。
「M&A」の相手先が見つからない場合の対処法
後継者不在の場合に、他の企業等に会社や事業を譲渡することを決断した場合、まず、会社や事業を譲渡する相手企業を探す必要があります。
事業内容がどのような企業から見ても魅力があれば、相手方を探し出すのは難しくないと思いますが、事業規模が小規模であったり、ニッチな業種である場合には、興味を持ってくれる相手方企業を見つけることは容易ではありません。
したがって、相談できる取引先や知人がいる場合には、言い出しにくい部分もありますが、まずは積極的に相談してみる必要があります。なお、会社が売り出しているなどと外部に広く伝わって風評被害が生じることは避けなければなりませんので、相談する相手を選ぶ場合にはそのようなリスクが少ない先を選ぶことになります。
このように自ら探してみたり、信頼できる取引先や知人にあたってもなかなか相手方企業を探し出せない場合には、M&Aの仲介業者を活用することを検討しても良いかもしれません。最近は中小企業のM&Aを担当する仲介業者も増えてきています。
他方で、このような仲介業者は特に行政によって監督されている訳ではないため、一部においては高額な手数料を請求してきたり、業務をきちんと実施しないような業者もおりますので、注意が必要です。
公的機関としては、各都道府県において、「事業引継ぎ支援センター※」が設置されており、無料にて相談等を行っていますので、相談してみても良いかと思います。
※2021年4月より、「事業承継・引継ぎ支援センター(https://shoukei.smrj.go.jp/introduce/)」に変更になりました。
M&Aの相手方が見つかった場合には、譲渡条件を詰めて行くことになります。一番重要なのは、譲渡対価ですが、その譲渡対価を決めるためには、相手方によって、当該事業がどのような内容・状況となっているのか、何かリスクが潜在していないかという点を調査する必要がありますので、通常は相手方企業担当者やその委託を受けた税理士・公認会計士・弁護士により資料調査が実施されます。
この調査のことをデューデリジェンス(DD)と言ったりします。
このような経緯を経て合意に達した後に、会社・事業の譲渡が実施されます。中小企業のM&Aの多くは株式譲渡の方式をとっており、前株主が譲渡先から株式譲渡代金を受け取ることになります。
したがって、経営者が会社を譲渡しようと決めたとしても、株主の一部が反対しているような場合には円滑に手続が進まない場合もありますので、そのような場合の対応などについては専門の弁護士に相談して対応することをお勧めします。
なお、会社や事業を譲渡した後においても、まずは従業員にきちんと説明を行い、また取引先にも説明を行ったり引継ぎを行うことになります。
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