2025年には、日本の中小企業の約半分にあたる127万社が「後継者不在」になると予想されています。今回は、社内に会社を引き継ぐ親族や従業員がいない場合、「M&A(企業の合併や買収)」で会社を継続させる方法を解説します。※本連載は、植木康彦氏、髙井章光氏、榑林一典氏、宇野俊英氏、上原久和氏の共著『ゼロからわかる事業承継・M&A90問90答』(税務研究会出版局)より一部を抜粋・再編集したものです。
M&Aの「実施形態」4つ
会社や事業を他の企業に譲渡する場合に、株式譲渡のほかにも、一部事業のみを譲渡するなど、当事者双方の意向や税務・法務面における課題への対応によって、様々な方法を検討することになります。
① 株式譲渡
会社の株式を譲渡する方法ですので、株主が個別に相手方と契約して株式を譲渡します。会社の事業に影響を及ぼさない方法であるため事業価値の毀損が少なく、従業員もそのまま承継されることになるため、多くの場合はこの方法が採用されています。
ただし、全株主が自らの株式を譲渡することに賛同していないと成立しないため、反対株主がいる場合には説得し、又は他の方法を選択することになります。
② 事業譲渡
会社の事業を譲渡する方法であるため、契約当事者は会社となります。複数の事業がある中で一部の事業のみを移転する場合や、債務超過の状態などの理由により、相手方企業から会社の負債やリスクまでも承継したくないという意向が示された場合には、譲渡対象を明確にした上で、事業譲渡が実施されます。
事業譲渡においては株主総会の特別決議が必要であるため、議決権を有する株主の3分の2以上の賛成が得られる状況である必要があります。
③ 会社分割
事業譲渡と同様に会社の一部を移転させる方法ですが、手続は事業譲渡より煩瑣でありまた時間がかかるため、通常は事業譲渡の形式が採用されています。ただし、ライセンス契約等の契約関係や許認可の承継は、事業譲渡よりは会社分割の方がしやすいため、そのような事情がある場合には会社分割が採用されることがあります。
④ 合併
会社を相手方会社に合併させ、一つにする手続です。一定の煩瑣な手続と時間がかかるため、前記①から③で対応できる場合には、その対応が優先して選択されます。
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Ginza会計事務所
公認会計士・税理士
1962年新潟県柏崎市生まれ、明治大学商学部卒業
高野総合会計事務所パートナーを経て、Ginza会計事務所創立(代表)
現在は、事業再生、事業承継、M&A、財務・税務DD、価値評価、税務支援等の業務、及び経営者の参謀役に注力。
事業再生研究機構理事
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髙井総合法律事務所
弁護士
1992年司法試験合格、1995年第二東京弁護士会弁護士登録。あさひ法律事務所(現あさひ法律事務所、西村あさひ法律事務所)アソシエート弁護士勤務、須藤・高井法律事務所パートナーを経て、髙井総合法律事務所開設(代表)。
企業法務、企業組織再編実務、企業再建実務、中小企業関係実務など幅広く業務を行っているほか、『ケーススタディ事業承継の法務と税務』(ぎょうせい、2018年)など事業承継に関する書籍や記事を多数執筆。
現在、日本弁護士連合会日弁連中小企業法律支援センター副本部長、中小企業政策審議会臨時委員(経済産業省)、「事業引継ぎガイドライン」改訂委員会委員(中小企業庁)、事業引継ぎ支援事業の評価方針検討会委員(中小企業基盤整備機構)、日本商工会議所経済法規専門委員会委員など務める。
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OAG税理士法人
税理士
1965年山梨県生まれ。半導体商社勤務を経て、現在、OAG税理士法人マネジメント・ソリューション部部長、税理士。
専門誌への寄稿や講演活動のほか、経済産業省「新たな組織法制と税制の検討会」委員、「事業再生研究機構」理事、「全国事業再生・事業承継税理士ネットワーク」幹事などの委員を務める。
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株式会社UNO&パートナーズ
代表取締役
1989年株式会社三菱銀行(現、株式会社三菱UFJ銀行)入行。中小、中堅企業の法人融資を主に担当。1997年、事業会社に転じ、ベンチャー投資、M&Aを経験後、独立系のベンチャーキャピタルでフロント、バック部門を経験。2007年より安田企業投資株式会社(保険会社系ベンチャーキャピタル)でベンチャー投資、バイアウト投資に従事。
2015年7月独立行政法人中小企業基盤機構で事業引継ぎ支援事業全国本部プロジェクトマネージャーに就任(現任)。
2016年株式会社UNO&パートナーズ設立。
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上原公認会計士事務所
所長
公認会計士
関西学院大学商学部卒。2002年に北國銀行入行後、有限責任監査法人トーマツ、東京商工会議所に設置されている東京都事業引継ぎ支援センターの統括責任者補佐を経て2017年7月より中小機構中小企業事業引継ぎ支援全国本部のプロジェクトマネージャーに従事。
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