台湾では子どものネット学習への理解がある
様々な学習ツールを利用して学ぶ、生涯にわたる「学習能力」が重要になる
台湾では、かつて多くの高校や大学において、夜間部が存在していました。その後、生涯教育の一環として、休日や空き時間を使って学習できる学校、たとえば「国立空中大学」(日本の放送大学にあたる)や通信教育が整備されてきました。それに加えて、現在はネット教育も選択肢の一つになっています。
私は、これからの時代は生涯にわたる「学習能力」が重要になると確信しています。様々な分野を学ぶことに楽しみを見出すことができれば、人生の幅はもっと広がるでしょう。楽しみながら学ぶのは、決して悪いことではありません。
学習には「こうするべき」ということはありません。各自の「優秀」の定義は、広範だからです。だから、「このようなやり方をしているので、優秀ではない」と簡単に決めつけてはならないと思います。これは家庭や学校だけでなく、企業でも同じです。私たちの国は国民国家であり、民主国家であって、決して企業の国家ではないのですから、人に対して安易にレッテルを貼ることは避けるべきです。
六十歳で会社をリタイアしても、台湾人の多くは起業したりボランティア活動を行います。むしろ定年後に黄金時代を迎えると言ってもいいかもしれません。会社は退くけれども、そのまま休むわけではありません。
一つ例を挙げましょう。台湾で1999年に発生した921大地震の後に、こんなことがありました。日本の建築家である坂茂氏が、彼の作品である「紙の教会」を分解して台湾に送り、それを組み立て直して台湾中部の南投県に設置したのです。当時、その地域は非常にさびれた場所でしたが、「紙の教会」ができたことがきっかけとなり、人気の観光スポットになりました。数多くの観光客が訪れ、地場産業にとって大きな助けになりました。
この案件にはたくさんの人たちが関わっているのですが、中でも、リタイアして時間に余裕のある人たちが、現役時代にもまして一生懸命取り組んでくれました。私たちは彼らを「黄金聖闘士」と名づけました。日本のアニメ『聖闘士星矢』をもじってつけた名前です。彼らは地域作りに大きな貢献をしてくれています。
こうした生き方は、台湾では一般的です。仕事をしながら自分で起業するとか、早めにリタイアして創業するとか、いろいろな方法があります。私の父も、リタイア後は非営利の教育活動に携わり、台湾全土を駆け回っています。私自身も33歳でリタイアして、今は公益のために楽しみながら仕事をしているわけです。
台湾では、大人が「空中大学」や通信教育のような学習ツールを使い、社会に出た後も学び直しの経験があるので、子どもがネットを使って学んでいくことにも理解があります。現在では、EMBA(Executive MBA)の学位をネットで取得することも可能になっています。大人にそうした経験があれば、自ずとネット教育の良さも理解されてくるでしょう。