こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

プログラミングを学びたい子どもは学ぶ

八歳のときに分数の概念を教えるプログラムを書く

 

今の段階で、台湾のプログラミング教育が成功しているかどうかを判断するのは、やや時期尚早ですが、成功しているのではないかと思われる点がかなりあります。それは、都会や田舎といった地理的条件の差を感じさせず、どんな場所でも高速ネット回線が存在し、プログラミングに関心のある子どもたちが環境(コンピュータ、ネット回線、教えることができる教師の有無など)に左右されることなく、学ぶことができる点にあります。

 

私がプログラミングを習い始めたのは八歳の頃でしたが、当時私が通っていた小学校でもプログラミングの授業がありました。その頃、USBメモリーはもちろん、フロッピーディスクすら普及していない時代で、カセットテープを使ってプログラムを読み込ませていました。

 

台湾の小学校では「プログラミングを学びたい人は学ぶ」というスタイルだったという。(※写真はイメージです/PIXTA)
台湾の小学校では「プログラミングを学びたい人は学ぶ」というスタイルだったという。(※写真はイメージです/PIXTA)

このようなプログラミングの授業はありましたが、「義務教育なので一応みんな参加しなければならない」だけで、誰もがプログラミングを学ばなければならないわけではありませんでした。「プログラミングを学びたい人は学ぶ」というスタイルだったのです。

 

プログラミングに興味を持っていない子どもには、プログラミングへの興味を失わせないことが一番のポイントで、そのためには、無理やりプログラムを書かせるのではなく、自然にプログラミング思考を学ばせていくことです。そのようなことが小学校で積極的に行われていることは、非常に重要だと思います。

 

私はインターネットよりも早くパソコンと出会い、八歳の頃に最初のプログラムを書きました。それは分数の計算方法、つまり分数の概念を教えるプログラムでした。多くの子どもにとって、1/2と5/10が同じだというのは、決して直感的な概念ではありません。2と1は小さく感じ、10と5は大きく感じるからです。

 

私が書いたプログラムは、0から1までの直線があり、5/10と自分で数字を入力すると、数字の位置が直線上に風船によって表示されるというものでした。逆に言えば、表示された風船が何分の何の位置にあるのかを視覚的に捉えることができます。

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オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る

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2020年に全世界を襲った新型コロナウイルス(COVID‐19)の封じ込めに、成功した台湾。その中心的な役割を担い、2020年新型コロナウイルス禍においてマスク在庫管理システムを構築、台湾での感染拡大防止に大きな貢献を果たす。…

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