2025年には、日本の中小企業の約半分にあたる127万社が「後継者不在」になると予想されています。今回は、オーナー企業のあとを継いだ「雇われ社長」に降りかかった経営の問題と解決策について見ていきます。※本連載は、植木康彦氏、髙井章光氏、榑林一典氏、宇野俊英氏、上原久和氏の共著『ゼロからわかる事業承継・M&A90問90答』(税務研究会出版局)より一部を抜粋・再編集したものです。

「経営に無関心な株主」が増加すると…?

Q. 前社長の親族が会社を継がなかったため、幹部従業員であった私が社長に就任しています。株式はそのまま前社長一族が保有しており、私はいわば雇われ社長でありますが、経営にも慣れ、安定してきました。

ところが、大株主の一人であった前社長の弟が急死してしまい、相続人4人が当社の株式を相続したようなのですが、通知を送っても返信がまったくありません。

前社長も高齢であり、相続が生じた場合には株式は経営に無関心な相続人が取得することになり、そのうち株主総会の定足数を確保できなくなってしまうのではないかと危惧しております。どのような対策を講じたらよいでしょうか。

 

A. 株式が相続により分散し、経営に無関心な株主が増えた場合、株主総会を開催するのに必要な定足数を確保することができなくなったり、また、経営に興味のある一人の株主が親戚から議決権を集め回ったりすれば、経営に無関心な株主から容易に議決権が集まってしまい、経営基盤を揺るがす事態にもなり兼ねません。

 

したがって、資金を用意して現経営陣が株式を購入することや、会社が株主から一定の範囲にて株式を買い取ることを検討する必要があります。

 

(※画像はイメージです/PIXTA)
こんなはずじゃなかった…(※画像はイメージです/PIXTA)

経営者は「株主総会」が円滑に行われるように注力する

株式会社は株主の議決権行使によって決める株主総会で、取締役や監査役などの役員を選任したり、重要な事業の譲渡や会社分割、合併を決議します。よって、経営者は安定した経営を継続するためには、常に株主に留意し、株主総会が円滑に進むように対策を講ずる必要があります。

 

ところが、中小企業の株主総会は形骸化していることが多く、株主になっていたとしても配当がないことがほとんどであり、株主が株主権の行使や会社の経営状態に無関心である場合が少なくありません。

 

そうすると、株主総会招集通知を送付しても株主総会に出席せず、委任状も返送がない場合には株主総会を開催するために必要な定足数に足りず、株主総会が開催できない危険が生じます。

 

さらに、当該会社の経営に無関心な株主が多い場合には、それらの株主の議決権を集めて経営権を求める者が出てくる危険すら生じている場合があります。

 

したがって、経営者は常に過半数の議決権を有する大株主とは連絡を密にしながら、会社運営に協力を仰ぎ、支援を常に求める必要があります。

 

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ゼロからわかる事業承継・M&A90問90答

ゼロからわかる事業承継・M&A90問90答

植木 康彦、髙井 章光、榑林 一典、宇野 俊英、上原 久和

税務研究会出版局

●本書は、事業承継時に想定される税務、法務、M&Aなどに関して、それぞれの分野の専門家が実務上起こりうる問題点を踏まえてQ&A形式でわかりやすく解説しています。 ●本書の特徴は、以下があげられます。 ・ベーシックな…

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