日本人の死因のトップは「悪性新生物(がん)」という状況が長く続いていますが、世界に向けると、異なる実情が見えてきます。WHO(世界保健機関)の資料から、世界の死因に見ていきましょう。

WHOのレポートで「世界の死因」を見ていくと…

一方、世界に目を向けると、死因はどうなるのでしょうか。WHO(世界保健機関)のレポートから見ていきましょう。

 

2019年、世界で亡くなった方は5540万人。死因のトップは「虚血性心疾患」。日本人の死因でも2位に入るもので、世界の総死亡者数のうち16%を占めています。第2位が「脳卒中」で全死亡者の11%、第3位が「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」で全死亡者の6%と続きます。

 

【世界の死因(2019年)】

1位 虚血性心疾患
2位 脳卒中
3位 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
4位 下気道感染症
5位 新生児固有の状態
6位 気管・気管支・肺癌
7位 アルツハイマー病を含む認知症
8位 下痢性疾患
9位 糖尿病
10位 腎臓病

 

上位のうち、下気道感染症、新生児固有の状態、下痢性疾患を除き、すべて非感染性疾患です。ウイルス性気道感染のひとつで、小児に多い下気道感染症は、依然として世界でも致命的な感染症疾患としていますが、死亡者数は大幅に減少しているとしています。また第5位の「新生児固有の状態」(出生児外傷、早産、新生児仮死、敗血症、感染症など)も、2000年以降、死亡数が大幅に減少。そのほか9位の下痢性疾患も減少している疾患のひとつです。

 

7位のアルツハイマー病を含む認知症は、特に女性の死因として多く、その65%は女性。このあたりは日本と同様です。

 

死亡数が増加傾向にあるのは、6位の気管・気管支・肺癌、8位の糖尿病、10位の腎臓病。糖尿病は特に男性で、2000年以降80%も増加しています。

 

また2000年に死因のトップ10に入っていましたが、2019年にはランク外になった死因もあり、そのひとつが「HIV/AIDS」。死亡者数は51%減少し、2000年の8位から2019年には19位へ後退しています。

 

国民総所得に基づく、世界銀行による所得グループ別(低所得、低中所得、高中所得、高所得)にみていくと、低所得国では死因トップ10のうち6つは感染症で、マラリア、結核、HIV/AIDSのすべてがトップ10内に留まっています。ただし大幅な減少傾向が見られます。一方、慢性閉塞性肺疾患による死亡は、低所得国ではあまり見られない死因です。

 

低中所得国では、死因トップ10のうち、5つは非感染性疾患、4つは感染性疾患であり、1つは傷害によるもの。糖尿病は増加傾向にあり、2000年からほぼ倍増しています。

 

高中所得国では肺癌による死亡者数が著しく増加。また、胃癌も死因として多く、上位にランクしている唯一の所得グループです。また2000年以降、自殺による死亡が31%減少していることも特徴です。

 

高所得国では、高血圧性心疾患による死亡が増加。また、アルツハイマー病を含む認知症による死亡者も増加し、脳卒中を抜いて2番目に多い死因となっています。

 

世界的に経済の発展によるインフラの整備、衛生環境の改善などにより、近年、死亡原因は大きく変化しています。また超高齢化に直面している日本ですが、この先、世界の多くの国々は日本と同じ問題を抱えるといわれています。死因に関しても、多くの国が日本の現状に近づいていくと考えられるでしょう。現在、日本で行われている様々な対策が、世界にとって先進的なモデルになるかもしれません。

 

 

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