今や多くの国にとって、中国は、最大あるいは2、3番目の貿易相手国。政治的にもその国際社会への影響力が増す中で、各国にとって、中国語の重要性は増している。日本人にとっても、中国語を少し学んで、多少なりとも理解できると、様々な局面で便利なことは間違いない。本連載は、中国通の財務省OBとして知られ、現在は、香港の新しい金融機関であるニッポン・ウエルス・リミテッド(NWB/日本ウエルス)の独立取締役も務める金森俊樹氏が、特別な「中国語入門」講座をお届けする。

「声調」はなぜあるのか?

中国語を学び始めて、まず誰もが覚えるのは、「我是日本人」、「私は日本人です」だろう。主語、述語、目的語の順序から英語に似ていると思われるが、例えば、「説日語的中国人、、」、「日本語を話す中国人、、」といった、いわゆる関係代名詞構文は、英語よりむしろ日本語に近いのではないか。

 

構造は日本語と英語の中間とみた方がよいだろう。話す場合、こなれた語順はあるが、あまり気にする必要はないと、中国語の先生から言われたことがある。日本語でもわかりにくい自動詞と他動詞の区別、また受け身をどう表現するかなども、日本語以上に曖昧な印象である。これも、中国人の先生に聞くと、受け身かどうかは、意味的に間違えようがないことが多く、気にする必要はない、そうでない場合には、動作をする主体に「被」「譲」などをつけて受動を表わす用法を用いればよいと言われたことがある。

 

 

ある単語が名詞か形容詞か、はたまた動詞か、これも特に欧米人はよく気にするが、学習するにつれて、あまり意味がないと思うようになった。これら曖昧さは中国語のやさしい面でもあり、難しい面でもある。

 

中国語学習者を悩ます問題として、声調が挙げられることが多い。抑揚のようなもので、よく言われるのが、「あー(フラット)」「あー(上がる)」「あー(下がって上がる)」「あー(下がる)」、基本は4つで(組み合わせや連音変化で、軽声と呼ばれる弱い声調が生じるなど、多少変化してくる場合がある)、全ての単語に声調がある。日本語や英語にもアクセントがあるが、声調のように明確ではない。

 

声調を多少間違っても通じるのでないかと思われがちだが、そうはいかない。声調が普通話(プートンフア、中国語の標準語)と異なる内陸部の方言など聞くと、聞き取れるようで、実はさっぱりわからないことが多い。

言語構造上の「簡単さ」を声調が補っている!?

声調に何か規則性はあるのか、誰もが関心を持つが、いまだ謎である。しかし、大量の単語情報をコンピューターで解析すると、何らかの規則性は多少検出できるかもしれない。なぜ声調があるのかも謎である。

 

中国語は漢字だけ見ても、外国人はどう発音するのかわからない。そこで、発音をアルファベット表記した拼音(ピンイン)というものがある。これを見るとわかるが、似たような拼音が無数に並んでいる。基本的には、異なる意味を表現するため、必然的に声調が発生したというのは、筆者の独断である。

 

言語構造の複雑さという点から見ると、例えば中国語には、英語のような単数・複数形、あるいはロシア語のような女性・男性・中性形の区別はなく、名詞や形容詞の主格、対格、与格、造格、前置格といった格変化の複雑さもない。日本語との比較で言えば、「、、を」「、、に」といった助詞にあたるようなものもない。書き言葉は漢字のみを使用し、日本語のような、ひらがな、カタカナに相当するものはない。そういう面では単純な構造である。

 

しかし、中国語も発達した言語として、当然、日本語や英語など他の言語と基本的に同じ量の情報が伝達できるようになっているはずだ。つまり、これも筆者の独断になるが、これら言語構造上簡単になっている部分を補う形で、別のところで複雑になっている必要があり、その典型が声調と解釈することもできるのではないか。

 

※本連載は原則、毎週日曜日に掲載していく予定です。

 

 

本稿の記述は、必ずしも学問的裏付けがあるものではありません。また、簡体文字は原則、対応する日本語漢字で表記し、中国語発音の表記は、本来不可能で行うべきではありませんが、便宜上カタカナ書きとしました。

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