投資法人の設立には管轄の財務局長の許可が必要
それでは、全体像を把握したところで、ここからは個々の私募リートがどのような形で組成されるのかを具体的に見ていきましょう。
私募リートは、本連載の第9回で紹介したように投資法人が保有する資産を資産運用会社が運用する仕組みとなっています。そこで、はじめに投資法人と資産運用会社を設立することが必要となります。
まず、投資法人の設立は、設立のメンバーとなる「設立企画人」によって進められます。設立企画人のうち少なくとも1名は、資産運用会社、信託会社等、資産運用会社等の役員、使用人もしくは過去にそれらの立場にあった者でなければならないとされています(通常は、資産運用会社が設立企画人となります)。
設立企画人は、会社の定款に相当する規約を作成して管轄の財務局長に届出を行い、投資口の募集・発行の手続きを行うとともに設立時役員などを選任します。そして、設立時役員等による調査を経た後で、設立の登記を行うことにより投資法人が成立します。なお、設立した投資法人が実際に資産の運用を行うためには、さらに管轄の財務局長の認可を受けなければなりません。
資産運用会社の設立には投資運用業の登録が必要不可欠
一方、資産運用会社の設立に際しては、宅建業(宅地建物取引業)免許の取得と、金商法(金融商品取引法)に基づく金融商品取引業者(投資運用業)の登録が不可欠となります。
さらに、宅建業法に規定する取引一任代理等の認可を受けることも必要になります。この認可を受けることにより、投資法人等と行う不動産取引については通常の代理・媒介契約で求められている手続きが不要となります。もっとも一任代理といっても、資産運用会社がすべてフリーハンドで、自由気ままに投資対象を決めるというわけではありません。
どのような物件をリートに組み入れるのか、またどのような地域で投資を行っていくのかなど、私募リートの詳細については投資家からのリクエストにも耳を傾けながら作り込んでいくことになります。
また、物件の運用を進めていく上では運用ガイドラインを守ることも重要となります。運用ガイドラインとは業界団体の指導に基づいてまとめる自主ルールであり、ポートフォリオの構築方針や個別投資基準、運営管理方針等を定めています。
さらに、後ほど説明するように購入する不動産を最終的に決定する上では、外部の専門家、有識者らによって構成されているコンプライアンス委員会の手続きを経ることも必要となります。このように私募リートでは、投資家の利益が不当に損なわれることがないように、資産運用会社が法令を遵守して不動産を運用する仕組みが、様々な形で整えられているのです。