「不良債権処理のニーズ」が法整備を後押し
皆さんは不動産証券化と聞いてどのようなイメージをおもちでしょうか? 不動産証券化の歴史は、実は日本ではまだ浅く、その試みが本格的に行われ始めたのは20世紀の末近くになってからでした。
きっかけとなったのは、バブル崩壊後に訪れた日本経済の停滞の大きな要因となっていた不良債権問題でした。金融機関の抱えていた巨額の不良債権を清算し問題の抜本的な解決を図るためには、債権の担保となっていた不動産の処分を進めやすくする環境を整える必要があったのです。
そのために導入されたのが「証券化」です。不動産が証券化されればその売却を円滑に行うことが可能となります。このような不良債権処理のニーズを背景に、不動産証券化のためのスキーム(仕組み)作りに必要となる各種の法制度が、以下のような形で整備されていきました。
①1995年、不動産特定共同事業法を施行
②1998年、特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律を制定
③2000年、投資信託及び投資法人に関する法律を改正
資産流動化法の改正で「Jリート」が誕生
不動産特定共同事業法とは、「不動産特定事業」すなわち「複数の投資家が出資し、不動産会社などの専門家が不動産事業を行い、その運用収益を投資家に分配する」事業に関するルールを定めたものです。
また、特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律は、特定目的会社または特定目的信託を用いて資産の流動化を行う制度の確立を図ったもので、2000年には「資産の流動化に関する法律」と名称が変更されました。
一般には「資産流動化法」と呼ばれています。投資信託及び投資法人に関する法律は、投資信託と投資法人に関するルールを定めたものであり「投信法」と略称されています。
同法の改正により「REIT(以下、リート)」と呼ばれる不動産の投資信託が解禁され、その日本版として2001年に「Jリート」が誕生することとなりました。