不動産の選択・購入は資産運用会社によって行われる
今回は、実際にどのようなプロセスを経て、リートに不動産が組み入れられるのかを見ていきましょう。
不動産の選択・購入は資産運用会社によって行われます。最終的な購入の意思決定を行うためには、コンプライアンス・オフィサーや投資委員会の審査を経ることが必要となります。
その流れは、以下のような形になります。
①投資運用部(投資に関する運営管理を行う部門)による運用資産の選定
②コンプライアンス・オフィサーによる審査
③投資委員会に上程
④投資委員会における審議及び決議
⑤取締役会及び投資法人への報告と取得計画の実行
この①から⑤の各手続きについて順に詳しく見ていきましょう(なお、紹介するのは当社の例になりますが、他社の場合もほぼ同様の流れになるはずです)。
不動産購入の意思決定までの手続きとは?
①投資運用部(投資に関する運営管理を行う部門)による運用資産の選定
はじめに、投資運用部の担当者によって取得候補となる運用資産(不動産)が選定されます。選定された不動産については詳細なデューデリジェンスが行われ、その結果を踏まえた上で運用資産の取得計画案が起案されます。
デューデリジェンスでは鑑定価格調査のほか、建物診断調査、土壌汚染調査、地震リスク調査、法務調査等が実施されることになります。
②コンプライアンス・オフィサーによる審査
続いて、法令等遵守上の問題点に関する検討が行われます。まず、投資運用部によって、取得計画案とそれに付随関連する資料がコンプライアンス・オフィサーに提出されます。
コンプライアンス・オフィサーは取得計画案について法令等遵守上の問題について、より詳細に討議する必要があると判断した場合には、コンプライアンス委員会を招集します。そして、コンプライアンス委員会において審議が行われます(なお、当社の場合、取得計画案に関する取引が利害関係者との取引に該当する場合には、コンプライアンス・オフィサーは必ずコンプライアンス委員会を招集し、コンプライアンス委員会で法令等遵守上の問題の有無を審議する取り決めとなっています)。
以上の手続きを経た後、取得計画案に法令等遵守上の問題がないと判断された場合には、取得計画案が承認されることになります。一方、法令等遵守上の問題が存在すると判断された場合には、取得計画案の中止または内容の変更が指示されます。内容変更の指示を受けた取得計画案については、内容変更後に再度、同様の審査を受けます。
③投資委員会に上程
コンプライアンス・オフィサーの承認を受けた取得計画案は、さらに投資委員会に上程されます。
④投資委員会における審議及び決議
投資委員会では、運用資産が投資法人の運用ガイドライン等に適合しているか否かなどの確認が行われ、また、その取得価格がデューデリジェンスの結果を踏まえた適正なものか否か、審議を行います。
そして、それらの審議を踏まえて、運用資産に関する取得の実行や取得価格の承認を含めた決議を行います。この投資委員会の決議をもって、取得計画が決定されたことになります(取得計画が投信法に定める取引に該当する場合は、同法に従い役員会の事前承認を得ることも必要となります)。
投資委員会の承認が得られない場合は、取得計画案の中止または内容の変更が指示されます。なお、これらの審議と決議の公正性を確保するために、コンプライアンス・オフィサーには、議事進行等の手続き及び審議内容に法令違反等の問題があると判断した場合に投資委員会の審議・決議の中止を指示する権限が与えられています。
⑤取締役会及び投資法人への報告と取得計画の実行
投資委員会における審議及び決議を経て決定された取得計画と、その付随関連資料は取締役会に遅滞なく報告されます。ただし、取締役会の開催時期等の問題から、取締役会に遅滞なく報告することが難しい場合には、取締役会の全構成員に個別に報告することで取締役会への報告に代えることも可能とされています。
また、前述の取得計画とその付随関連資料は投資法人に対しても報告されます。これらの手続きを経た後、投資運用部は、取得計画の内容にしたがって運用資産の取得を実行します。