●金融政策を議論し決定するFOMCでは7名の理事と5名の地区連銀総裁が投票権を持っている。
●2021年に投票権を持つFOMCメンバーのほとんどは、景気を重視する「ハト派」的な政策スタンス。
●市場は来年の金融政策の正常化開始を予想、今後はテーパリングに関するメンバー発言に注目。
金融政策を議論し決定するFOMCでは7名の理事と5名の地区連銀総裁が投票権を持っている
米国の連邦準備制度(The Federal Reserve System)は、1913年の連邦準備法によって設立された中央銀行制度です。その最高意思決定機関が、ワシントンにある連邦準備制度理事会(The Board of Governors of The Federal Reserve System)で、一般的にFRB(The Federal Reserve Board)という略称で呼ばれています。FRBは連邦政府の1機関であり、7名の理事(うち議長1名、副議長1名、規制担当副議長1名)で構成されています。
FRBは、その下に12の地区連邦準備銀行(地区連銀)を抱え、業務に関する広範な監督権限を付与されています。なお、金融政策の決定に関する議論は、連邦公開市場委員会(FOMC)で行われ、7名の理事(現在1名空席)と5名の地区連銀総裁が投票権を持ちます。理事とニューヨーク地区連銀総裁は常任ですが、4名の地区連銀総裁は輪番制により1年の任期となります。
2021年に投票権を持つFOMCメンバーのほとんどは、景気を重視する「ハト派」的な政策スタンス
つまり、投票権を持つ5名の地区連銀総裁のうち、ニューヨーク地区連銀総裁を除き、4名が毎年入れ替わることになります。2020年は、クリーブランド、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリスの各地区連銀総裁がメンバーでした。2021年は、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコの各地区連銀総裁が、新たに投票権を持つメンバーとなります。
2021年のFOMCで投票権を持つメンバーについて、最近の発言を踏まえ、金融政策のスタンスを、ハト派(景気重視)、中立、タカ派(物価重視)の3つに区分したものが図表1です。
米国の景気は回復方向にあるものの、パウエル議長をはじめ多くのメンバーが、金融緩和の縮小には慎重な姿勢がみられるため、現時点でメンバーのほとんどは、ハト派的なスタンスにあると推測されます。
市場は来年の金融政策の正常化開始を予想、今後はテーパリングに関するメンバー発言に注目
なお、FOMCメンバーが適切と考える政策金利水準の分布図(ドットチャート)では、17人のメンバー(投票権を持たないメンバーも含む)のうち12人が、2023年末もゼロ金利が適切との見方を示しています(2020年12月時点)。これに対し、市場では早い段階でのゼロ金利解除の織り込みが進んでいます。直近では2022年に0.7回の利上げが見込まれており、最近の米長期金利は、これに連れて上昇しています(図表2)。
米国では過去、量的緩和の段階的縮小(テーパリング)、量的緩和終了、利上げ、バランスシート縮小、という順番で、金融政策の正常化が進められました。今回も、利上げ前にテーパリングが行われると思われ、市場では2022年の年初の実施が予想されています。パウエル議長は現在、テーパリングの話は時期尚早としていますが、今後はパウエル議長をはじめ、FOMCメンバーのテーパリングに関する発言に注目が集まります。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年FOMCメンバーの金融政策スタンス』を参照)。
(2021年3月12日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト