「ストレスですね」で片づけてしまう医師もいるが…
ここまで見てきたように、原因不明のつらい不調は単なるからだの問題といったレベルにとどまらず、うつ病などの予期せぬリスクをはらんでいます。しかし医療機関では不定愁訴と診断がつくと、投薬などによる対症療法で片づけられてしまうことが多いものです。治療法はもちろん、その原因についても「わからない」と匙(さじ)を投げられてしまうことさえ珍しくなく、医師によっては、ストレスのせいだと片づけるだけのところもあります。
では、まったく原因がわからないかといえば、そうではありません。多くの人が「原因不明」と思い込んでいる不定愁訴には、自律神経が関係しているのです。
自律神経は、交感神経と副交感神経から成り立っています。もちろん、目に見えたり、手で触れられるものではありません。そのため自律神経の乱れに気づくことができる人は、ほとんどいないでしょう。また、医療からのアプローチだけで自律神経の調整をしたり、治療をしたりということも困難です。
自律神経の乱れに起因した症状が見られる場合、「自律神経失調症」という病名がつくことがよくあります。自律神経失調症の症状は、不定愁訴のそれと非常によく似ています。自律神経失調症の定義は、「検査を行っても、器質的な病変はないのに、種々の不定愁訴を訴える状態」とされています。つまり、「自律神経が乱れることで、さまざまな不定愁訴が見られる状態」が自律神経失調症なのです。
自律神経の働きは、何が原因で、乱れるのでしょうか。
そもそも神経には「体性神経」と「自律神経」の2種類があります。「体性神経」とは、簡単にいうと「(手足などの)からだを自分の意思で動かすための神経」です。
一方「自律神経」とは、体温をうまく調節したり、血圧をコントロールしたり、消化器を適切に機能させるなど、「自分の意思とは関係なく働く神経」です。私たちが通常無意識にうまく行えている呼吸や循環、消化、排泄、発汗、体温調整、睡眠などをコントロールしてくれている「縁の下の力持ち」的存在です。
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