こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

台湾がオンライン学習を利用する理由とは

台北の冷房の効いた教室に閉じこもって「地方の問題をどう解決するか」について上から目線で討論するよりも早く、すでに多くの人が、現場に出て問題の解決を進めています。私たちは、そうした現場にいる人たちのために資源を確保し、法律上の障壁を取り除く手伝いを行わなければなりません。

 

先ほどのデジタル学習パートナーや、こうした先住民に対する教育などは、政府から予算が出ています。また、その予算がどのように使われているかについては、政府の予算監督プラットフォームを通じてチェックすることができるようになっています。

 

このように台湾では、デジタルを利用しながら公正な形で教育の平等を確保しようとする努力が続けられているのです。

 

オンライン授業の利便性と可能性

 

今回のコロナ対策として、台湾では新学期の開始を二週間遅らせ、夏休みも二週間遅れで始めることにしました。しかし、休校という形は選択しませんでした。最大の変化は、「密」を避けたということです。また、対面型のディスカッションを行う授業では、オンライン学習を応用する機会が増えましたが、これはマスクをつけていると相手の表情がわからないためです。また、ひとりでパソコンに向かっているときにはマスクを外して話すことができるからです。

 

ただ、オンライン授業といっても、子どもがそれぞれの家にいて学校とつながるという形ではありません。小規模のクラスやグループに分かれ、衛星のように、それぞれ異なる場所から大きな教室空間につながるような形をとりましたが、台湾では以前からそのようなオンライン授業がよく行われていました。

 

ビデオ関連のテクノロジーが発達したため、画像が不鮮明だったり音声が途切れたりといった問題もなくなりました。パソコンを開いて接続すれば、お互いの顔がはっきり見えるので、オンライン授業の弊害を感じずに授業を進めることができます。

 

「授業のデジタル化」といっても、その内容は実に様々なものがあります。たとえば、ビデオチャットや二つの教室を合併させる「ダブルルーム」、一人の先生が担任する教室にいて専門課程の先生が他の教室やスタジオなどの離れた場所で授業を行う「ダブルティーチャー」といった方法は、いずれも「空間」という制約を取り除くために考え出された方法です。つまり、別の空間にいても、同じ時間を共有しているのです。

 

私がデジタル担当政務委員に任命される前のことですが、台湾のテレビ局から子どもたちのインタビューを受けました。そのとき私はフランスにいたので、VRのスタジオで行われました。このインタビューで、私はVR内で3Dスキャンを受け、自分が小学生と同じ身長になるようなキャラクターを作りました。カメラマンたちがあらゆる角度から私を撮影して映像を人形のように縫い合わせ、別の技法で関節を調整することで、私が手を動かせばバーチャル空間の中の私も同じように動きます。

 

こうすることで、子どもたちは身長が180センチある私を見上げて話す必要がなく、同じ目線で、またより身近な空間で話すことができるようになります。これはすべての子どもたちに親近感を持ってもらうためになされた工夫ですが、あらかじめ録画されているビデオを見るより、ぐっと心理的な距離を近づけることができます。

 

こういうものも「授業のデジタル化」の一つの形と言えるでしょう。このように、デジタルの活用によって、教育の方法にも様々な可能性が生まれてきています。

 

 

 

 

オードリー・タン
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)

 

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