銀行業務の三分の一に当たる作業がAIが代行
イノベーションを進めるほど、仕事はクリエイティブになる
いかにしてエンジニアのスキルと結合させてデジタル化を進めるか、あるいは社会全体の能力をどのように結合させれば社会のデジタル・イノベーションが可能になるかを考えることが、DXを成功させるための基本的な概念になります。
過日、国立中興大学で講演を行いました。そこに台中市を基盤としたデジタル・コンバージェンスに関わる経営者が参加していました。
この会社は、デジタルと有線のテレビコンテンツを取り扱っていますが、最近になりLINE TVと提携関係を結びました。しかし、この経営者は自社でもケーブルテレビを持っており(台湾では百局以上のケーブルテレビが乱立している)、新しい技術であるLINE TVと従来の伝統的なケーブルテレビのコンテンツという、いわば競争相手ともいえる両者を今後どのようにして結合させていくべきか悩んでいるという話をしました。
私は、「デジタル・イノベーション」という考えに基づき、ケーブルテレビのような古い形態と、最新のLINE TVを結合させていくことは可能であると考えていますし、それはむしろ素晴らしいアイデアだと思うのです。
ある銀行の例を挙げましょう。今回の新型コロナウイルスによって影響を受けた企業に対し、各銀行は政府の委託を受けて緊急ローン貸付を行いました。ただ、審査作業が煩雑で、他の銀行が一定程度の件数しか処理できなかったのに対し、この銀行は政府から銀行に委託された件数のうちの四分の一に及ぶ案件を引き受けたのです。なぜそんなことが可能だったかといえば、この銀行は審査をAI化していたからです。
たとえば、ある人がローンの申込みをしてきたとします。この人は以前に何度もローン審査に合格していて、そのときと条件は変わっていません。改めて審査をする必要はないのです。この銀行では、このようなケースはAIによる審査に切り替えました。すると、実際にローンの申し込みしてくる人たちの三分の一が同じような状況であったため、審査内容をいちいち詳しく見る必要がなかったのです。
その結果、銀行業務の三分の一に当たる作業がAIにより代行できるようになりました。こうしてAIを活用したローン申し込み審査の新しい方法が生まれたのです。これによって人間は、よりイノベーショナルな仕事に集中できるようになりました。