こんな人材が日本にも欲しかった。オードリー・タン。2020年に全世界を襲った新型コロナウイルスの封じ込めに成功した台湾。その中心的な役割を担い、世界のメディアがいま、最も注目するデジタルテクノロジー界の異才が、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIとイノベーション、そして日本へのメッセージを語る。本連載はオードリー・タン著『オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る』(プレジデント社)の一部を抜粋し、再編集したものです。

重複性が高い部分については、AIや機械に任せる

もう一つ例を挙げましょう。ある産業用機械を製造するメーカーでは、これまで機械にセンサーや通信機器などが取りつけられていませんでした。そのため、製造途中の歩留まりや修理の要不要、あるいは生産ラインのどの部分を改善すれば効率が上がるかなどを把握できずにいました。そこでこの会社では、それらの情報を把握するため、AIを使ったシステムを自社開発し、それにより、事業が格段に進展することになりました。

 

以上の事例は、「メディア」「サービス」「製造業」という三つの産業において、どのようなデジタル・イノベーションが行われてきたかを示す好例です。

 

銀行の三分の一に当たる作業をAIが自動で行うことができるというのは、素晴らしいことです。

 

ただ、この事例に限って言えば、AIは、残りの三分の二の仕事についてまだ行ったことがないため、信頼して任せることはできません。結果的にこれらの部分は、経験を持つ人間が判断する必要があります。これは実際に銀行で起きている事例として中興大学でも話したことですが、「AIによって人間の仕事が奪われる」というのはやや誇張した言い方だということです。

 

たとえば、コンピュータがあってもデータを分析するアナリストの仕事は必要です。すでに「自動レイアウト」というシステムが存在しますが、編集という作業は人間の手で行われなければなりません。「AIを導入すれば人間の職業が消える」ということはありえないのです。ある仕事のうち「重複性が高い部分については、AIや機械に任せる」というスタイルに変わるだけです。

 

AIが代行するようになった仕事に就いていた人は、今度はAIを誘導したり訓練させたりして、「新しいデバイスに取り込める部分はないか」と探すように仕事を始めればいいのです。実際、いくらでも替えが利くような仕事を進んでしたいと思う人はいないでしょう。そういう仕事には、達成感もありません。だから、そこはAIや機械に担ってもらえばいいのです。要するに、イノベーションを行えば行うほど、人間の仕事はよりクリエイティブになっていくということなのです。

 

 

 

 

オードリー・タン
台湾デジタル担当政務委員(閣僚)

 

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