必要経費の支払いは「開業前と開業後」どっちが得?
正解:開業前の支払いを「開業費」にしておけば、節税に便利
開業届を出すことで、事業所得として扱われ、青色申告などのメリットを受けられると第1章で説明しました。ここでは、開業届の出し方が必要経費に影響するという話をします。
開業届を出すことによって、事業所得として扱われるという話をすると、「事業のための支払いは、開業届を出したあとのほうがいい?」と思われる方もいるでしょう。
結論としては、開業届を出す前に経費を使っても、まったく問題ありません。むしろ、開業前に必要経費を支払ったほうが有利な場合もあります。
同じ支払いであっても、開業前か開業後かによって扱いが変わります。具体的には、開業後の支払いは、その内容に応じて「消耗品費」や「会議費」といった名目になるのですが、これらを開業前に支払うと、すべて「開業費」という扱いになります。
法令上、開業費とは、「事業を開始するまでのあいだに、開業準備のために特別に支出する費用」と定められています。たとえばつぎのような費用が開業費として考えられます。
・店舗の契約費や改装費
・書籍などの資料代
・名刺や印鑑、文房具などの消耗品費
・ポスターやホームページ作成などにかかる広告宣伝費
・会議や打ち合わせにかかった部屋代や飲食代
一方、事業を目的として開業前に支払ったものでも、開業費にできないものもあります。たとえばつぎの3つです。
①いずれ返還される保証金
②販売する商品の仕入れや材料の費用
③30万円以上の物品の購入費
①が開業費にならない理由はわかると思います。いずれ戻ってくるお金ですから、必要経費にはできません。ただ、帳簿上は資産として計上する必要があるので、金額などはきちんと管理しておきましょう。②については、開業費ではなく、「売上原価」という扱いになります。売上原価は、その商品が売れたタイミングで必要経費にすることができます。
③は、すでに説明した「減価償却」のことです。10万円以上の固定資産は、減価償却の計算をして、購入費の一部が必要経費になると説明しました。ただし、開業前の支払いであれば基準が30万円に引き上げられています。