「毎年確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年1月頃になるとこのような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

必要経費の支払いは「開業前と開業後」どっちが得?

正解:開業前の支払いを「開業費」にしておけば、節税に便利

 

開業届を出すことで、事業所得として扱われ、青色申告などのメリットを受けられると第1章で説明しました。ここでは、開業届の出し方が必要経費に影響するという話をします。

 

開業届を出すことによって、事業所得として扱われるという話をすると、「事業のための支払いは、開業届を出したあとのほうがいい?」と思われる方もいるでしょう。

 

結論としては、開業届を出す前に経費を使っても、まったく問題ありません。むしろ、開業前に必要経費を支払ったほうが有利な場合もあります。

 

同じ支払いでも開業前と開業後かによって処理の仕方が変わってくるという。(※写真はイメージです/PIXTA)
同じ支払いでも開業前と開業後かによって処理の仕方が変わってくるという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

同じ支払いであっても、開業前か開業後かによって扱いが変わります。具体的には、開業後の支払いは、その内容に応じて「消耗品費」や「会議費」といった名目になるのですが、これらを開業前に支払うと、すべて「開業費」という扱いになります。

 

法令上、開業費とは、「事業を開始するまでのあいだに、開業準備のために特別に支出する費用」と定められています。たとえばつぎのような費用が開業費として考えられます。

 

・店舗の契約費や改装費
・書籍などの資料代
・名刺や印鑑、文房具などの消耗品費
・ポスターやホームページ作成などにかかる広告宣伝費
・会議や打ち合わせにかかった部屋代や飲食代

 

一方、事業を目的として開業前に支払ったものでも、開業費にできないものもあります。たとえばつぎの3つです。

 

①いずれ返還される保証金
②販売する商品の仕入れや材料の費用
③30万円以上の物品の購入費

 

①が開業費にならない理由はわかると思います。いずれ戻ってくるお金ですから、必要経費にはできません。ただ、帳簿上は資産として計上する必要があるので、金額などはきちんと管理しておきましょう。②については、開業費ではなく、「売上原価」という扱いになります。売上原価は、その商品が売れたタイミングで必要経費にすることができます。

 

③は、すでに説明した「減価償却」のことです。10万円以上の固定資産は、減価償却の計算をして、購入費の一部が必要経費になると説明しました。ただし、開業前の支払いであれば基準が30万円に引き上げられています。

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確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

小林 義崇

河出書房新社

クイズ形式で出題。ベスト・チョイスはどっちか? 青色申告or白色申告。開業届を出すor出さない。家族を雇うorパートを雇う。iDeCo or小規模企業共済。郵送で申告or e‐Tax。国税専門官として数多くの申告相談に携わった著者…

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