認知症になる高齢者の数が増加しています。金融機関のなかには、不正防止の観点から、認知症とわかると預金者の口座を凍結してしまう銀行もあります。今回は、残された配偶者がお金で困らないように、生前からできる財産管理の方法について解説します。※本連載は、石川秀樹氏の著書『認知症の家族を守れるのはどっちだ!?成年後見より家族信託』(ミーツ出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

「家族信託はワンセットで夫婦を守る」の意味は?

ワンセットで夫婦を守る」とは、配偶者の1人が委託者(当初受益者)になり、もう1人が第2受益者となる信託です。「委託者死亡で終了する家族信託」の文言、「委託者」を「委託者と配偶者」と読み替えてください。信託の内容をほとんど変えずにふたりとも守っていくことができます。

 

夫婦がいて、どちらかに精神的な衰えが出て来ます。その時に、夫なら夫を委託者にして夫の財産管理を子がしてあげればそれでいいのか。お母さんは元気だから、お母さんは大丈夫だよね、と信託を終了させて相続手続きをすれば、「やれやれ、終わったね」ということになるのか……と言うことです。

家族信託の王道は、配偶者が全財産をまず承継する形

筆者なら設計段階で「お母さんを第2受益者にして信託を続けよう」と声をあげます。80歳まで元気でも、これから先が老後の本番で、どうなるかは本当にわからないからです。

 

この提案は適切な提案だと思いますが、家族にきちんとしたコンセンサス(合意)がなければできません。しかもその合意は、信託契約書を作る時点で家族に形成されていなければなりません。

 

次のイラストは、委託者Xから第2受益者Yに信託の受益権が移ったことを表しています(図表4)。妻Yが、Xの有していた受益権の全部を承継しました。受託者は娘のAです。

 

[図表4]
 

 

やがてYも亡くなるとこの信託は終了。帰属権利者であるAとBが残余財産を得ます。自宅が売却されていれば残った現金をふたりで分け、売れずに残っている場合は、再度売却を試みるか不動産のまま相続するか、いずれにしても契約に沿って相続します。

 

〈全財産を配偶者がいったん“承継”し、子が親の財産を相続することは後回し〉この形はまさに家族信託の「王道」です。家族の合意がなければこのような承継はできないでしょう。

 

石川 秀樹

静岡県家族信託協会 行政書士

 

 

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認知症の家族を守れるのはどっちだ!?成年後見より家族信託

認知症の家族を守れるのはどっちだ!?成年後見より家族信託

石川 秀樹

ミーツ出版

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