家族が「後見人」になるのを避けたい、裁判所の理由
しかし、今は違います。成年後見制度を管轄する最高裁判所は完全に「家族後見人は減らす」という方向にかじを切っています。「家族後見人の不正が横行しているから」と言うのが表向きの理由なのですが。
3年前から家族後見人は20%台になってしまいました。家族・親族で後見人になれるのは4人に1人ということになります。
実は、グラフでは読みきれない「数字」もまだあります。それは「本人の金融資産が1000万円を超えている場合、家庭裁判所はほとんど士業者を後見人に選任する」という傾向です。「1000万円」という数字は家庭裁判所ごとに違うようで、「東京では500万円以上」と聞いたことがありますし、静岡では「1100万円」と聞きました。
いずれにしても、大金を家族後見人が管理するのは避けたい、という意向がよくわかります。なぜそこまで家族が信用できないのでしょうか。
2012年(平成24年)からは「後見制度支援信託」もスタートして、日常使うお金だけを家族後見人の手元に置き、大きなお金は民間の信託銀行が受託者となる支援信託に預け入れ、そこから出金するときには家庭裁判所に上申書を書いて許可を求めるようにもなりました。
後見制度支援信託を使うかどうかは、「強制」とはされていません。しかし断ると、今度は家族後見人とは別に「後見監督人」が家庭裁判所によって付される、ということが多くなっています。
銀行は、こういう最近の事情を承知したうえで認知症問題に困惑して窓口を訪ねるお客様に対して「成年後見人を――」とすすめている、というわけではないようです。ですから、聞く側が正しい情報を持っていないと、ミスリードされてしまいます。
「成年後見制度」が使いにくい理由とは?
成年後見制度の運用は法曹界が行っているので、世間の感覚とは大きくズレれています。
「事前相談」というものがないし、「即日事情聴取」を受けようものなら、「申し立てたことは失敗だった。やっぱりやめます」と言っても、そこからは引き返せません。柔軟性ゼロ。「本人を守るための制度です、使うと決めたら覚悟してやって来なさい」と、すこぶる上から目線なのです。
ですから、普通の人の成年後見への感じ方は、「後見人に誰がなるのか分からない。家族や親族を“候補”としてあげても、聞き置かれるだけでそれが通るか通らないか、審判が出るまで分からない。出たら最後、それに従うしかないのでは、そんな制度、使いたくても使えたものじゃあない」ではないでしょうか。
他分野の行政サービスと比べ、成年後見分野は“別世界”です。
石川 秀樹
静岡県家族信託協会 行政書士
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